前年度までの研究に引き続き、繊維傾斜が、可視光の全透過率、全反射率に及ぼす影響について調べるため、そのモデル作成に取り組んだ。細胞を角筒形状とした単純構造を仮定し、可視光の全光透過率および反射率の測定に関して、木材の繊維方向と可視光の入射方向からなす角が影響することを示し、その後、細胞構造内の光路を考慮したモデルを作成し、繊維角と光特性の関係を算出し、実験結果と比較した。このモデルによる光路の考察から、各界面における透過率と反射率は繊維傾斜の影響を強く受け、また、入射する場所によっても光路が著しく異なることが導かれた。また、 本モデルによる数値解析結果と実験値は良い一致が見られた。特徴として、中・長波長領域で、組織構造の影響が強く出ており、細胞壁厚さおよび繊維傾斜の増加とともに、全透過率の減少、全反射率の増加をそれぞれ確認した。 また、昨年度の検討において、自由水や塗料が内腔へ浸透した部位で界面構成が変わることが推定されたことから、簡易的な光学特性のモデル化を行うとともに、光学特性が色に与える影響についても検討した。その結果、塗料や水が内腔部に浸透することによる色変化は複雑な挙動を示すものの、その原因となる反射率は、当初の予想通り、材料内部の反射界面の影響を受けた単調な変化であることが明らかとなった。このことから、木材細胞壁の化学成分変化だけでなく、木材内部の組織構造を考慮に入れることにより、従来は詳細な予測が困難であった木材の色変化についてある程度の予測が可能であることを示唆したといえる。
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