スダジイ、シラカシおよびユリノキについて、樹幹屈曲処理を行い、引張あて材形成の組織観察および各種植物ホルモンの組織内分布を明らかにした。その結果、特徴的な偏差分布を示す植物ホルモンはオーキシンとアブシシン酸であり、TW側で多く、OW側で少ないことが3樹種で確認された。傾斜処理をしたスダジイ苗木においてもオーキシンとアブシシン酸の同様な偏差分布が確認された。オーキシンの凍結連続切片での分布解析から、OW側では形成層のオーキシンが極めて少ないことが明らかになった。エチレンの前駆物質であるACCはG層を形成するスダジイとシラカシでOW 側でのみ多量に存在し、ポプラでの既往研究と一致した。しかし、G層を形成しないユリノキでは、TW側とO W側の両方で多量に存在した。
ポプラ既往研究では、ACC投与によって、引張りあて材形成が誘導されたものの、ACCを投与したスダジイでは引張りあて材形成は認められず、師部組織の細胞分裂促進が誘導され、内生サイトカイニンの有意な増加が認められた。
屈曲処理をおこなったスダジイにD2-IAA(標識オーキシン)を投与して、D5-IAAで定量することで、オーキシン極性輸送への屈曲処理の影響を調べた。TW側(屈曲上側)への輸送は認められず、OW側でオーキシンの極性輸送速度の増大が推測される結果を得た。
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