本研究の目的は、放射能汚染地域における原木露地栽培シイタケの追加汚染メカニズムの解明であり、①蛍光試薬とHPLCによる簡易なCs分析方法の検討、②培養基から子実体へのCs移動量に影響を与える要因の調査、③ホダ木におけるCsの動態調査、及び④得られた知見を基にした栽培現場での追加汚染防除方法の検証を実施することにしている。 ③および④については、8kBq/kgの放射性セシウムを含む土壌上にて原木栽培により得られたシイタケの乾燥重量基準における放射性セシウム濃度は、ほだ木の上部、中部、および下部にてそれぞれ8.4、7.9および35.8 Bq/kgであった。同様にシイタケの安定セシウム濃度は、0.78、0.56および0.75 mg/kgであった。原木栽培開始から15ヶ月経過したほだ木の軸方向におけるIP画像を撮影したが、ほだ木上部、中部および下部にて顕著な差異は認められなかった。ほだ木下部より収穫した子実体の放射性セシウム濃度は、上部および下部より顕著に高濃度であったが、各部位から収穫した子実体の安定セシウム濃度(mg/kg)に対する放射性セシウム濃度(Bq/kg)の比は上部、中部および下部にてそれぞれ10.8、14.1および47.7 Bq/mgであり、上部および中部の比は11と14であるのに対して下部の比は48と突出して高く、ほだ木下部のみ放射性セシウムが安定セシウムより多量に移行したとは考えにくく、むしろ下部の子実体が発生する際に土壌と偶発的に接触したため放射性セシウム濃度が増加したと推測される。ほだ木下部より収穫した子実体の安定セシウム濃度に顕著な増加は認められず、またIP画像においてもほだ木下部への顕著な放射性セシウムの移行は認められなかったことから、土壌からほだ木へのセシウムの移行は生じていないことを明らかにした。
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