研究課題/領域番号 |
19K06178
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
大橋 康典 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50467437)
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研究分担者 |
木村 肇 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (60416287)
山田 竜彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリコール改質リグニン / 耐熱材料 / 有機-無機ハイブリッド / シランカップリング剤 / 代替プラスチック |
研究実績の概要 |
昨年度の段階で、研究全期間を通じての目標(150℃~180℃程度の高温域でも使用可能な材料の創製)は既に達成され、耐熱性が250℃を超える材料の試作に成功した。本年度は、改質リグニンとシランカップリング剤との反応条件を大きく変化させ、物性に与える影響を確認した。
具体的な成果は下記の通りである。 ①改質リグニンを溶媒に溶解させ、シランカップリング剤KBM-403(信越化学製)及び2-エチル-4-メチルイミダゾールを混合し、60℃で24時間反応後、さらに150℃、2時間反応させた。その結果、用いる溶剤の種類によって材料作製の成否が決定づけられ、改質リグニン分子中のPEG鎖が長い場合はより疎水性の(THFなど)、短い場合はより親水性の(DMAcなど)溶剤を用いるほうが材料の品質が向上することが明らかになった。②DMAc溶媒中の改質リグニン量を①の3~5倍として同様に反応させたところ、リグニンの配合量を増減させることにより、弾性率およびガラス転移温度の制御が可能であることが明らかになった。③①と同様の反応系(溶媒はDMAc)に、KBM-403混合時に鎖延長剤テトラエトキシシランを同時添加したところ、材料の作製は可能であるものの、用いる改質リグニンのPEG鎖が長くなると、エポキシ基の反応が妨げられること及び原料が凝集しやすくなることが明らかになった。④KBM-403のかわりにアルキル鎖の長いシランカップリング剤であるKBM-4803(信越化学製)を用いることにより、ゴム状の材料が得られることが明らかになった。⑤2-エチル-4-メチルイミダゾールのかわりに塩酸水溶液を触媒として用いたところ、加水分解速度が上昇し、最終的には弱い枝分かれした高分子構造になることが明らかになった。また、DMA測定の結果、①~⑤において試作に成功したすべての材料の耐熱性が250℃以上であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の段階で、研究全期間を通じての目標(150℃~180℃程度の高温域でも使用可能な材料の創製)は既に達成され、耐熱性が250℃を超える材料の試作に成功している。一方、本年度実施予定であった改質リグニン由来ノボラック樹脂とシランカップリング剤との反応条件最適化については、新型コロナウイルスの影響で出張実験が制限され、実施できなかった。そこで、実験計画を変更し、改質リグニンとシランカップリング剤との反応条件を大きく変化させて物性に与える影響を確認したところ、耐熱性を担保しつつも諸物性が大きく変化した各種新規材料の創生に成功するなど、計画策定時点で想定できない様な成果を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本来2020年度に実施予定であった、改質リグニン由来ノボラック樹脂とシランカップリング剤との反応条件を最適化し、更なる物性向上を図る。最適化された試作品の耐熱性評価には、DMAに加えてTG/DTAを用いる。得られた結果について、特許を出願したのち、学会発表や論文投稿、需要家への持ち込み等を通して普及を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルスの影響によって出張での実験や学会発表が制限されたため、旅費の計上がゼロとなった。次年度も出張実験等は困難と思われるため、さらに魅力的な新規材料の創生を目指し、共同研究2機関それぞれにて十分な実験が実施できる様、必要十分な実験機器を購入して研究を遂行する。
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