研究課題/領域番号 |
19K06180
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
松原 独歩 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部実証試験セクター, 主任研究員 (10560154)
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研究分担者 |
若島 嘉朗 富山県農林水産総合技術センター, 富山県農林水産総合技術センター木材研究所, 副主幹研究員 (10446635)
北守 顕久 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (10551400)
清水 秀丸 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (70378917)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 応力緩和率 / 内力係数 |
研究実績の概要 |
本研究は、プレストレスを利用した木質材料同士の新しい剛接合部の開発を目指すものである。 プレストレスを利用するには、時間経過と共に応力が減少する応力緩和挙動の長期的把握とその抑制方法について検討する必要があるが、2019年度はこの応力緩和実験の開始と、プレストレスを与えた接合部のモーメント抵抗性能を評価するのに重要であると考えられる内力係数(外力に対するボルト軸力増分の割合)について検討した。 応力緩和実験では、①木材の繊維に対する直交方向(横圧縮)、②木材の繊維方向(縦圧縮)、③圧縮木材を接着挿入、④LVLを接着挿入、⑤縦圧縮と横圧縮の組み合わせ、⑥圧縮木接着挿入と縦圧縮の組み合わせ、⑦LVL接着挿入と縦圧縮の組み合わせ、の試験体を用意し、ボルトを用いて応力を与えた。それぞれ、劣化促進処理(飽水、 乾燥、飽水、乾燥、静置(2 日間)を順に行う。飽水処理は 20±3℃で 4 時間、乾燥処理は、60±3℃の恒温環境にて 20 時間、静置は室内で実施)、富山県農林水産総合技術センターの小屋裏に放置し、応力緩和挙動を観察した。2020年3月現在、劣化促進処理においては、LVL を用いた試験体の値が高く、応力緩和率約0.4を保持し、小屋裏に放置した試験体では、圧縮木挿入が応力緩和率約0.85 を保持することがわかった。 内力係数に関する検討では、引きボルト接合の軸方向引張実験から、初期プレストレスが大きいほど内力係数は低下傾向を示すと共に、定着長さが長くなるほど、その低下傾向は小さくなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の初年度の計画では、応力緩和実験の開始準備とモーメント抵抗性能実験の開始準備を目標にしていた。応力緩和実験では、ボルトに歪ゲージを挿入する作業に時間がかかると共に、設置作業を行う際にリード線が断線する等、実験開始までトライアルアンドエラーが続いたが、実験開始を年度内に行うことができた。一方、接合部のモーメント抵抗性能実験に関しては、応力緩和実験開始の苦戦から試験体の準備ができなかったが、設計を概ね終了すると共に、接合部の軸方向引張実験から内力係数がモーメント抵抗性能を評価するのに重要な役割を果たすことが判明した。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、引き続き応力緩和挙動を評価・解析していくと共に、さらに応力緩和を抑制する方法を検討し試験体を追加していく。また、プレストレスを与えた接合部のモーメント抵抗性能実験を行い、プレストレスが内力係数や剛性・耐力にどのような影響を及ぼすのか明らかにすると共に、有限要素法解析(FEM)を行い解析的検討も併せて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度においては、接合部のモーメント抵抗実験の試験体製作には至らなかったこと、2020年3月の学会大会が中止になったことから旅費等に残額が生じた。この残額は、2020年度において、モーメント抵抗実験の試験体製作や治具製作、学会発表旅費等に補填し、研究目標の達成に向けて研究を加速させる。
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