研究課題/領域番号 |
19K06182
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 暢夫 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50186326)
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研究分担者 |
高橋 勇樹 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (00761701)
安間 洋樹 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50517331)
前川 和義 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80250504)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 仔稚魚飼育水槽 / エアレーション / CFD解析 / PIV実験 |
研究実績の概要 |
①給排水による流れ場のシミュレーション技術の検証 水槽飼育の流場解析のために、PIV(粒子画像可視化法)実験とCFD解析によるシミュレーションを比較した。水槽は、円筒形の小型アクリル水槽(直径0.487m,水位0.4m)を対象とした。給水管(外径:18mm,内径:13mm)はアクリル水槽の中心部に,給水口が底面から2mmだけ離れるように配置した。また、排水管(外径:13mm、内径:10mm)は中心から0.208 mに配置し,その長さは水面から0.086 mとした。給水量は46.9mL/s,105.3mL/sの二通りで解析・実験を行った。その結果、両方の流量でCFD解析は流速を若干過大評価したものの、両者で縦方向の循環流が確認され、定性的に水槽内の流場を再現できていた。以上から、養殖水槽内の流場を可視化できる手法を確立した。 ②エアレーションによる流れ場の解析 エアレーションによって生じる流場の解析を可能とするCFD解析手法を提案した。実験対象は、円筒形の小型アクリル水槽(直径0.487m,水位0.4m)とし、エアストーン(直径0.03m、長さ0.165m、気孔径12μm)を水槽中心の底面に配置した。解析では、水と空気の2層流を再現するために、VoF法を用いると共に、エアストーンの細かい気孔径を再現するために、多孔質モデルを用いた。同水槽を対象にCFD解析とPIV実験を行い比較した結果、両者で循環流が発生し、実験と解析で定性的な一致が見られた。これらに加えて、シミュレーションした流場をもとに、クロマグロ(Thunnus orientalis)の仔魚を模した粒子の流れ場内での挙動をシミュレーションした。その結果、一定以上の浮上流がない場合、クロマグロ仔魚は沈降することが明らかとなり、この浮上流は過去の飼育試験での観察結果と同程度の流速となり、シミュレーションの妥当性が検証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、養殖水槽環境をシミュレーションするために必要な解析技術を提案すると共に、PIV実験を用いて検証実験を行うことで、解析精度の検証を行った。以上から、当初予定していた、実験計画を問題なく実施できており、次年度以降の養殖水槽解析の最適化手法の提案のための基礎部分を構築・検証できたといえる。 以上から、本年度の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、給排水条件およびエアレーションを用いた養殖水槽環境をシミュレーションするために必要な解析技術を提案すると共に、PIV実験を用いて検証実験を行うことで、解析精度の検証を行った。併せて、クロマグロ仔魚を見立てて、養殖水槽内の粒子挙動を可視化することで、養殖水槽内の物理環境と飼育魚の関係性を定量的に評価できる手法を開発した。次年度は、以上の解析手法を基に、養殖水槽環境を最適化する手法の開発に着手する。 本研究では、最適化アルゴリズムとして、CFD解析を基としたニューラルネットワークを用いた応答曲面法による手法を提案し、養殖水槽内の飼育環境の最適化を試みる。応答曲面の構築には、養殖水槽の規模、給排水量、エアレーション通気量等を基本パラメーターとし、細密な応答曲面を推定する。最適化の目的としては、①本年度に明らかとした、クロマグロ仔魚の沈降防止に必要な上昇流が発生する面積の最大化する、②養殖水槽内の流れを均一にするために、水槽内の流場の変動を小さくする、③水槽内の水質維持のために循環速度を最大にする、などの最適化を試みる。最適化した水槽については、粒子の挙動シミュレーションを行うことで、最適化前の結果と比較し、最適化の効果を検証する。 さらに、最終年度には、上記の手法に基づいて開発した養殖水槽を対象に飼育試験を行うことを計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今のコロナウイルスの影響により、参加予定の学会(令和2年度春季水産学会)が中止となり、これに係る旅費、参加費が未使用となったため。 これらの使用計画として、当初の予定通り、学会発表などの成果発表のための費用として使用することを計画する。昨今の情勢により、諸学会が開催されない場合は、論文投稿費用として用いる予定である。
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