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2019 年度 実施状況報告書

渦鞭毛藻ウイルス感染過程の徹底精査:吸着-侵入-複製-形態形成から放出過程まで

研究課題

研究課題/領域番号 19K06186
研究機関高知大学

研究代表者

高野 義人  高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 特任研究員 (10435852)

研究分担者 長崎 慶三  高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (00222175)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードウイルス遺伝子増幅解析 / FIB/FE-SEM観察
研究実績の概要

感染細胞中におけるウイルス遺伝子コピー数の測定を試みた。DNAポリメラーゼをターゲットとした定量的リアルタイムPCRのプライマー及びプローブを作成し、ウイルス接種後からの経過時間における1細胞内に含まれるコピー数を測定した。その結果、ウイルス接種から1分後には細胞表面への付着が確認され、経過時間に伴ってコピー数が増加すること、最大値で推定約4万コピーとなること、8時間後から顕著な増加が見られ、20時間後には最大値近くまで増加すること、また、単離した核内から本遺伝子が検出されたことからHcDNAVは他のDNAウイルスと同様に細胞内に入った後に一度核内に侵入することが明らかとなった。さらに、NucBlue Live ReadyProbe Reagent (Thermo Fisher Scientific)を用いることで生細胞中のDNA領域を蛍光観察した後にRT-PCR解析を行うことで、ウイルス接種後の経過時間と細胞内でのウイルス複製領域のサイズと含まれる遺伝子のコピー数の関係を明らかとした。
FE-SEMにより,感染途上で死滅したと考えられる宿主細胞内に未熟なウイルス粒子を観察できたが,ウイルス感染からの経過時間との厳密な照合はできなかった。そこで本研究では,感染後の経過時間が分かっている細胞を集束イオンビーム(FIB)装置を用いて切削することで,感染過程の観察を試みた。これまでに,渦鞭毛藻核内の染色体の表面構造の観察には成功しており,固定方法や条件設定によってウイルス粒子の観察も可能であると考えられる。
後の1細胞トランスクリプトーム解析に向けて、まず、HcDNAVのゲノムを明らかとしておく必要がある。これまでにイルミナ社のMiseqを用いて解析したデータはあるが、全てを繋ぐことができていない。そこで、Milipore社のMinIONを用いてシークエンスを行い、解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、安定的に無菌培養株を維持し、その状態を簡便にチェックしながら用いる手法を身につけることができた。ウイルス接種後の経時的リアルタイムPCR解析によって、ウイルス接種からの時間と宿主細胞内でのウイルスDNA複製量の関係を明らかとした。また、生細胞中での細胞内のウイルス複製領域の観察とその細胞を用いたその後の遺伝子解析に用いることを可能とした。これらによって、今後に予定している1細胞トランスクリプトーム解析を行う際のサンプル準備をし易くなり、さらに、同様の作業を行うことによって、感染段階を識別した細胞毎で遺伝子発現比較が可能であると期待される。また、今後予定しているTEM観察においても、感染過程を観察するためのサンプルの準備方法や、急速凍結置換法によるTEM試料作製も既に数回試みており、充分なTEM観察まで至ってはいないが、その技術の熟練度は上がっていると言える。また、HcDNAVのゲノム解析についても進めており、次の作業を行うことで全解析が可能であると見込める段階となっている。

今後の研究の推進方策

HcDNAVのゲノムの完全解読を目指す。前年度では、抽出したDNAをMilipore社のMinIONを用いて直接シークエンスを行ったが、得られたシークエンスはデータ量として不足していた。その理由として、抽出できたウイルスDNA量が十分量ではないことが挙げられる。そこで、キアゲン社のREPLI-g Single Cell Kitを用いてゲノム増幅を行うことで克服し、全ゲノム解析に十分なシークエンスデータの入手が期待できる。HcDNAVの全ゲノムデータは、トランスクリプトーム解析において必須となるので確実に入手したい。1細胞トランスクリプトーム解析については、これまでに開発し用いてきた「1つの生細胞をNucBlue Live ReadyProbe Reagentで染めて蛍光顕微鏡観察を行い、ウイルス増幅段階を把握した細胞を解析に用いる」方法で進める。1細胞によるウイルスゲノムの発現解析は大きなチャレンジとなるが、ウイルス感染の段階を把握しつつ各々のステージでの遺伝子発現を厳密に解析するにはこの手法しかない。
急速凍結置換法によるTEM試料作製を進めており、最後の観察まで行ってみないと成功しているのかは分からないが、現時点で期待を持てるサンプル作製を進められている。まずは、準備中のサンプルの観察をおこない、感染の各段階の観察を行うべく、引き続き急速凍結置換法によるTEM試料作製と観察を繰り返す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスによる感染症の流行により年度末の日本藻類学会が中止となったため。
今年度に行われる学会への参加、もしくは、消耗品などの物品の購入に充てる。

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公開日: 2021-01-27  

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