研究実績の概要 |
令和2年度の評価試験にて、研究代表者らが見出した新規プロバイオティクス乳酸菌Lactococcus lactis subsp. lactis K-C2株の生菌体と死菌体をヤマメに経口投与したところ、死菌体区のヤマメの成長が、無添加区および生菌体区と比較して有意に促進していることが明らかとなった。本研究成果を基に、令和3年度は、代謝物を産生しない死菌体経口投与による宿主生物に与える影響に着目し、ヤマメの成長、免疫関連遺伝子の発現及び腸内フローラに与える影響を評価した。 K-C2無添加飼料、K-C2生菌体添加飼料及びK-C2死菌体添加飼料を給餌する試験区を設定し、ヤマメを26日間飼育した。飼育終了後にヤマメの腸を摘出し、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム法により腸内フローラの解析を行った。また鰓、脾臓、肝臓及び腎臓を回収し、Total RNA抽出しcDNAを合成した。このcDNAを鋳型に、成長関連遺伝子(IGF-I)及び免疫関連遺伝子(IFNγ, TNF-α, IK-1β)の発現量をリアルタイムPCRを用いて、ΔΔCt法により評価した。 メタゲノム解析の結果、無添加区と比較して、生菌体及び死菌体添加区の腸内細菌フローラではTenericutesもしくはProteobacteriaの割合が高まった。α多様性解析を行ったところ、死菌体区は生菌体区よりも腸内での微生物種が豊富になり、死菌体区は非投与区と比較して、特定の優占種が存在し、各微生物種の割合が均等でないことが明らかとなった。またリアルタイムPCRの解析結果より、死菌体区において肝臓中のIGF-IやIFNγの発現が、非投与区と生菌体と比較して高まることが示された。 以上の結果より、死菌体の経口投与は、ヤマメの腸内フローラを改変し、成長や免疫関連遺伝子の発現を更新することが示唆された。
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