研究課題/領域番号 |
19K06194
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
山田 雄一郎 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (80458744)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 動物プランクトン / 端脚類 / Themisto japonica / Themisto pacifica / 食性 / カイアシ類 |
研究実績の概要 |
岩手県三陸海域5定点(県北部および南部の沿岸および沖合、県中部の沖合)において、2014年1月から12月にかけて主に夜間に採集された動物プランクトン試料 中よりThemisto属端脚類を抽出し、まず若齢体、未成熟雌雄および成熟雌雄の5段階の成長ステージに区分した。この中から成熟雌雄を抽出し、Themisto japonicaとT. pacificaに区分した後に体長を測定した後に実体顕微鏡下で消化管を取り出し、さらにその内容物を抽出した。消化管充満度を求めた後、光学顕微鏡を用いて内容物の同定を行った。可能な限り種レベルまで同定した。特に、カイアシ類の大顎が発見された場合はそのサイズを測定し、可能な限り種レベルまで同定した。 いずれの種においても、約半数の個体の消化管充満度が25%を超えており、特に4~5月の沿岸定点においては全個体の約20%が75%以上の消化管充満度を記録した。消化管内容物解析の結果、カイアシ類、オキアミ類および端脚類の付属肢、糞粒、および珪藻類の殻が多く含まれていた。消化管内容物に占める割合としては、カイアシ類の付属肢が最も多く(全体の40~80%)、次いで糞粒(8~38%)、オキアミ類の付属肢(6~21%)が多く含まれていた。消化管内容物中のカイアシ類の大顎をより詳細に解析した結果、両種とも冷水性種であるNeocalanus plumchrusを最も多く捕食していたことが考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度においては、三陸海域におけるThemisto属端脚類2種それぞれの消化管充満度および内容物の組成を解析し、両種の食性を明らかにし、主要な餌生物を推定することができた。これらの結果により、当該海域の食物網における両端脚類を通した物質輸送に関する知見を蓄積することができた。より詳細な端脚類の食性解析のためには成熟個体試料の解析結果のみでは不十分であり、若齢体の試料を追加することが望ましい。しかしながら、新型コロナウイルス感染防止の観点から他県への移動が大幅に制限され、試料を採集した岩手県水産技術センターへの出張もできなかったことから、十分な試料を得ることができず、現在までの進捗状況はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度に引き続いてThemisto属の若齢個体の消化管内容物の解析を行い、両種の生活史を通した詳細な食性解明を試みる。さらに、現場における動物プランクトン生物量とThemisto属両種の出現規模のデータを合わせて、三陸海域におけるThemisto属両種の動物プランクトン群集に対する捕食圧の評価を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染防止の観点から他県への移動が大幅に制限され、それにともなって当初予定していた国内出張を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。当該額については令和4年度における国内出張、学会への参加、物品の購入に使用する計画である。
|