イカナゴ属は沿岸生態系の食物連鎖を支え,水産資源としても重要な魚類である.一方,漁獲量は全国的に激減しており,早急な回復が望まれている.イカナゴ属は一生の大半を砂中で過ごす特徴的な生活史を持つことから,本研究では潜砂行動の生理・生態的な意義を明らかにすることを目的とした.その結果,潜砂,頭部の露出,遊泳・摂餌の3種類の行動を示し,光周期および概日リズムにより厳密に制御されていることが明らかとなった.また,砂中では鉛直的な移動を日周的に示し,十分な深度がない場合は夜間に遊泳するなど異常行動が生じた.すなわち,イカナゴ属の保全のためには,潜砂行動を正常に維持できる底質環境が必須であると考えられる
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