研究課題/領域番号 |
19K06197
|
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
本多 健太郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 研究員 (00720707)
|
研究分担者 |
長谷川 功 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (00603325)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | サケ稚魚 / 被食 / テレメトリー / ふ化放流 |
研究実績の概要 |
ふ化放流事業で放流されるサケ稚魚は、海に到達するまでの河川内でも多くが減耗することが報告されている。本研究の研究フィールドである北海道石狩川水系千歳川では、予備調査によって、サケ稚魚を放流する時期に稚魚の主要な捕食者である大型サケ科魚類(ブラウントラウトやイワナ)が放流地点付近で数多く観察されていた。本研究では、サケ稚魚放流期における大型サケ科魚類の行動パターンやサケ稚魚の被食の実態を明らかにすることを目的とし、特に、大型サケ科魚類がサケ稚魚放流期に放流地点付近に広域から蝟集するかどうかに着目した。 2019年の秋に計15尾の大型サケ科魚類に超音波発信器を装着・放流した。その後、河川内に設置した複数の超音波受信機によって放流した個体の行動を追跡した。現在までに顕著な蝟集行動は確認されていないものの、2/3以上の個体を追跡している。また、定期的な潜水目視調査によりサケ稚魚放流地点付近で多くの大型ブラウントラウトを確認している。さらに、捕獲した複数のブラウントラウトの胃内容からは大量のサケ稚魚(多い個体で>400尾)が見つかり、それらはいずれも耳石温度標識の付いた放流稚魚であった。 これらの結果から、放流されたサケ稚魚は付近に分布する大型サケ科魚類に相当量捕食されていることが分かった。今後はそのインパクトの大きさを計るためにも、目視調査で確認した個体がいつからそこにいて、またどこから来たのかを明らかにすることが引き続き求められる。そのためには、テレメトリー調査の継続に加え、潜水目視調査の規模を拡大することで、大型サケ科魚類の季節的な移動・分布様式を調べる必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画時期までに予定した数の大型サケ科魚類に超音波発信器を装着・放流し、現在まで多くの個体の行動が追跡できている。また、当初の計画にはなかった潜水目視調査の導入により、サケ稚魚放流地点付近の大型サケ科魚類を定期的に計数できているほか、同地点付近で捕獲した複数のブラウントラウトが大量のふ化場由来のサケ稚魚を捕食していることを明らかにした。以上により、ブラウントラウトを主とした大型サケ科魚類の河川内移動とそれらによるサケ稚魚の被食の実態が明らかになりつつあるため、「おおむね順調」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の調査を継続する。ただし、潜水目視調査によって大型サケ科魚類の分布状況を定量的に把握できることがわかったため、サケ稚魚放流期以降も調査を継続する。また、サケ稚魚の捕食者である大型サケ科魚類の河川内移動様式をより広範囲で把握するために超音波受信機の台数を増やし、配置も一部変更する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた超音波受信機のメンテナンスのための費用が不要になったことが主な理由である。研究対象の大型サケ科魚類の行動範囲をより広域でカバーするために、超音波受信機を追加購入するための費用に充てる計画である。
|