研究課題/領域番号 |
19K06204
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
工藤 貴史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00293093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漁村再生 / 限界集落 / GIS / 漁業センサス / 漁業集落 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究実施計画に従い、課題1「限界集落化と地域再生を実現する経営組織」に関する先行研究レビュー、課題2「限界集落化する漁業地区の就業構造と家族経営の展望」に関する統計分析、課題3「沿岸漁業における新たな経営形態とその発展可能性」に関する現地調査に取り組んだ。 課題1については、限界集落論及び地方消滅論とその反論としての農山村再生論、集落営農組織論、地域運営組織論についてレビューして整理した。 課題2については、漁村地域の限界集落化の実態を統計資料から把握するために、地理情報システム(GIS)によって漁業センサスと国勢調査をリンケージさせて、北海道、東北地方、長崎県の漁業地区・漁業集落の人口高齢化と漁業就業者の高齢化について分析した。主たる結果は以下の通りである。1)漁業集落における限界集落の割合は北海道19.5%、東北地方11.5%、長崎県19.5%であり、そのなかには14歳以下の年少人口が0の集落も一定数存在していた。2)その一方で漁業への依存度が高く年少人口と若年漁業者が多い漁業集落も存在していた。3)そのような若年層の多い漁業地区においては多様な漁業種類が存在しているという共通点が見られた。なお、これらの研究成果は北日本漁業経済学会と地域漁業学会において発表した。 課題3については、宮城県東松島市宮戸地区と同県石巻市寄磯浜地区において現地調査を実施した。当初は同県他地区への調査を予定していたが、共同経営組織という新しい経営形態とその発展可能性を明らかにするという目的を踏まえ調査地を変更することとした。調査した共同経営組織は、宮戸地区においてはノリ養殖と小型定置網の2経営組織、寄磯浜地区においてはホヤ養殖+定置網漁業の1経営組織である。これらの経営組織は、労働生産性の向上等による所得が向上しており持続可能な経営形態への転換が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は学会報告は1回を予定していたが、課題2の分析が順調に進展したことから2回の学会報告を行うことができた。しかし、現地調査は2箇所を予定していたが学務の多忙もあって1箇所の調査に留まった。しかし、当初予定していた三重県大紀町錦地区についてはコロナウィルスの影響で現地調査はできなかったものの、関係者が来京した際にヒアリングをしており、基本情報については把握することができた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1「限界集落化と地域再生を実現する経営組織」については、人口論、農山村再生論、集落営農組織論、漁業経営論にについてレビューする。 課題2「限界集落化する漁業地区の就業構造と家族経営の展望」については、対象地域を広めるとともに、2020年度に2018年漁業センサスが公表されるので経年変化についても分析を進めていく。「年齢バランスの取れた漁業就業構造」について統計と現地調査から明らかにする。また2019年度における統計分析の結果を踏まえて、限界集落化している漁業集落への現地調査を実施することとする。 課題3:「沿岸漁業における新たな経営形態とその発展可能性」については、共同経営組織、新規就業者受入育成組織、陸上作業請負組織、漁協自営事業を対象にして現地調査を実施する。 以上の研究課題を進めるとともに、その結果から限界集落化した漁村において地域漁業の再生を可能とする地域営漁組織について考察を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画は600,000円であったが実際の使用額は554,013円であり45,987円が次年度使用額となった。これは3月に予定していた三重県への現地調査がコロナウィルスの影響で中止になったためである。次年度使用額は当初の予定通り、三重県への現地調査のために使用する。
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