研究課題/領域番号 |
19K06204
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
工藤 貴史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00293093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 限界集落化 / 人口減少社会 / 人口減少時代 / GIS / 漁村再生 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究実施計画に従い、課題1「限界集落化と地域再生を実現する経営組織」に関する先行研究レビュー、課題2「限界集落化する漁業地区の就業構造と家族経営の展望」、課題3「沿岸漁業における新たな経営形態とその発展可能性」について研究に取り組んだ。 課題1と課題2の研究成果は2020年6月の漁業経済学会において発表し、同年7月に当学会の学会誌「漁業経済研究」に投稿した。本論文は受理されて2021年1月学会誌に掲載された。この論文では、1)沿岸市町村の将来人口と産業動態を展望したうえで人口減少社会における漁業の存在意義について明らかにし、2)北海道を事例に漁村地域の限界集落化と持続可能性について検討し、3)漁村地域における漁業再生の方向性と具体的取組についてについて紹介し、4)最後に人口減少時代における漁村再生の意義と課題について考察した。 なお、課題2については、兵庫県日本海側の但馬地区における漁業就業構造の変容過程と外国人労働力への依存構造について現地関係者へのヒアリング調査を実施した(コロナの影響でWEBによる遠隔でのヒアリング)。その結果、1)1970年代までは沿岸漁業と沖合漁業との相互補完的な漁業就業構造によって地域漁業の担い手が確保されていたこと、2)その後沿岸漁業の不振や地域内外の他産業への流出によって沿岸漁業への新規参入者が減少したこと、3)その結果地縁血縁によって沖合漁業の乗組員を確保することが困難になり、4)外国人労働力への依存と漁家の世帯内継承の断絶が起きていることを明らかにし、さらに技能実習制度から外国人労働力への依存構造を生み出す要因について考察している。 課題3については漁業における協業化に関する先行研究のレビューを行った。その成果を2020年12月に北日本漁業学会で発表し、2021年2月に論文を投稿した(現在査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により現地調査を実施することができなかったため当初の予定よりも研究の進捗状況は遅れている。なお、対面での調査は全て中止となったが、兵庫県但馬地区ではWEBを使って遠隔でヒアリング調査することができた。 先行研究のレビュー、統計資料(国勢調査・漁業センサス)とGISを用いた地域分析は順調に進展しており、その成果の一部は学会発表及び論文投稿している。研究成果については当初の計画の通りに進展している。 以上のことから(3)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、課題2:「限界集落化する漁業地区の就業構造と家族経営の展望」と 課題3:「沿岸漁業における新たな経営形態とその発展可能性」に取り組む。課題2については、昨年度までの統計分析によって限界集落に区分される漁村地域を特定することができたので、これらの漁村地域における漁場利用と生活環境条件の変化と地域漁業への影響について調査する。課題3については、昨年度までの漁業における協業化に関する先行研究レビューを踏まえて、沿岸漁業における複合経営による経営改善と生産力発展について調査を進める。以上の調査結果を踏まえて、課題4::「労働力不足解消と漁場の総合的利用を実現する地域営漁組織」について検討していくこととする。なお、本年度もコロナの影響によって現地調査が制約される可能性が高いが、WEBによる遠隔調査を含めて工夫して研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響によって現地調査に行くことができなかったため、旅費を使用しておらず、それが次年度使用額が生じた理由である。この次年度使用額の使用計画は当初の予定通り、現地調査の旅費として使用する。
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