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2020 年度 実施状況報告書

サンゴ礁生態系における付着珪藻群集の構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K06205
研究機関東京海洋大学

研究代表者

鈴木 秀和  東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90432062)

研究分担者 長田 敬五  日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (10147829)
神谷 充伸  東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (00281139)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード付着珪藻 / サンゴ礁生態系 / 分類学 / 形態 / 多様性
研究実績の概要

令和2年度は,新型コロナウイルス感染対策に伴う活動自粛により,予定していた南西諸島・サンゴ礁海域での調査が実施できなかった。そのため,試料の採集等のフィールド調査は,関東地方沿岸で行った。実施した内容は(1) 前年度に採集した珪藻試料の種同定と付着様式の把握,(2) 同出現種の光学及び走査電子顕微鏡による形態観察,(3) 前年度及び今年度に採集した珪藻の単種培養とDNA解析による系統解析,(4) 低真空分析走査電子顕微鏡を用いた管棲珪藻の粘液チューブの成分分析,を行い,主に次の1~3の成果を得た。1. 管棲珪藻の群体形状,チューブ内の細胞配列,被殻形態について,上記顕微鏡を用いて観察を行った結果,4属9分類群の出現を確認し,その記載を行った。このうちNitzschia属とParlibellus属において,1種ずつ新記載種を発見した。2. 管棲珪藻の粘液チューブの成分分析の結果,Navicula johanrossiiのチューブ表面において硫黄元素の局在が示された。この結果は管棲珪藻のチューブに硫酸化多糖類が存在するという先行研究の結果を支持した。さらに,本分析法は珪藻が分泌する粘液物質の新たな分析手法として有用であることが判明した。3. 上記顕微鏡を用いての微細構造の詳細な観察とrbcL遺伝子を用いた分子系統解析を行った結果,これまで近縁とされたきたSeminavis属,狭義のNavicula属及びPseudogomphonema属の適切な近隣結合系統樹の作成と系統解析に成功した。それによると,これら3属は近縁な祖先をもち,共通祖先から進化したSeminavis属は,殻面の外形が半披針形,殻帯の幅が被殻背側の中央付近で広がる,一次側葉緑体が棒状で二次側葉緑体が板状,という固有な形質を獲得したことが初めて推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年度は,実施計画における(1)南西諸島沿岸でのサンプリングサイトの選定のためのサンゴ礁海域の多様な基質環境からの付着珪藻を採集,(2)出現種の同定と付着様式の把握,及び(3)出現種の分子系統解析用の単種培養株の確立に取り組む予定であった。しかし,新型コロナウイルス感染対策に伴う活動自粛により,予定していた南西諸島・サンゴ礁海域での調査が全く実施できなかった。そのため,令和2年度は前年度及び関東沿岸域から採集した珪藻試料をもとに,(2)と(3)を重点的に行い,特に(2)から得られた画像データのパーソナルコンピュータによる解析と形態学的データに基づく出現種の形態的記載と(3)における数種の単種培養成功による分子系統解析の両課題が進展した。その結果,珪藻の分類体系を再検討する上で重要な解析データを得られた。これらの成果は,新種記載も含め,サンゴ礁生態系における珪藻の分類学的特性の知る上での貴重な資料となったと考える。なお,(2)に関しては,研究分担者・長田敬五・所属機関(新潟県)所有の高分解能走査電子顕微鏡の使用によりなされた。経費の旅費はその交通・滞在費に充てた。(3)に関しては,研究分担者・神谷充伸によるDNA解析に依った。経費の物品費はその薬品代と分析費用に充てた。

今後の研究の推進方策

令和3年度は,令和2年度に実施できなかった得られた結果をもとにして,令和2年度は,さらに(1) 南西諸島沿岸・サンゴ礁海域での多様な基質環境からの付着珪藻を重点的に行い,サンゴ礁海域の低次生産者としての微細藻類群集の構造解析,(2) 光学及び高分解能走査電子顕微鏡観察による詳細な形態学的情報の収集と低真空分析走査電子顕微鏡による付着様式を把握による,より詳細な分類学的検討と新種記載,(3) 多様度指数分析や類似度分析による亜熱帯海域の珪藻群集の地理学的検討,(4) さらなる単種培養株の確立と分子系統解析による珪藻の分類体系を再検討と系統解析,(5) 最終年度のまとめとして,(1)~(4)をもとにした包括的な分析・議論によるサンゴ礁生態系における付着珪藻群集の構造解析を行う。さらに,それらから得られた情報のデータベース構築と情報公開(関連学会・学会誌への発表)の取り組みも併せて遂行する。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 新型コロナウイルス感染拡大予防対策に伴う活動自粛により,予定していた南西諸島等のフィールド調査が実施できなかったため。そのため,当初の計画を大きく変更し,経費の大半は,高分解能走査電子顕微鏡の利用の為の交通・滞在費,そしてDNA解析費用に充てた。しかし,それらも上記理由のため,その遂行が計画通りにはならなかったことによる。
(使用計画) 前年度予定していた調査地を本年度分調査として実施する予定であり,前年度未使用分はそれに充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 千葉県小湊産紅藻マギレソゾに着生する珪藻類2021

    • 著者名/発表者名
      菅原一輝・鈴木秀和・神谷充伸・長田敬五
    • 雑誌名

      日本歯科大学紀要・一般教育系

      巻: 50 ページ: 15-26

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Taxonomic study of fossil pennate diatoms in Futoro Formation, Setana, Hokkaido, Japan with the description of Cocconeis setanensis sp. nov. and re-classification of three taxa.2020

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, H., Suzuki, H. & Nagumo, T.
    • 雑誌名

      Diatom

      巻: 36 ページ: 47-67

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 微細な海中粒子の増大する環境下における藻場が受ける影響および藻場の再生手法の検討2020

    • 著者名/発表者名
      荒川久幸・鈴木秀和・大草駿・樋口謙・三橋賢太郎・佐藤陽
    • 雑誌名

      漁港漁場漁村総合研究所調査研究論文集

      巻: (30) ページ: 69-73

  • [学会発表] 日本産海藻付着藍藻イワヒゲノコブPlacoma adriaticumの分類学的再検討2021

    • 著者名/発表者名
      福岡将之・鈴木秀和・神谷充伸・田中次郎
    • 学会等名
      日本藻類学会第45回大会(オンライン東京・2021)
  • [学会発表] Epiphytic diatoms on the red alga Laurecia saitoi from Kominato, Chiba Prefecture, Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Sugawara, K., Suzuki, H., Kamiya, M. and Osada, K.
    • 学会等名
      The 12th International Phycological Congress (Online, Chile)
    • 国際学会
  • [学会発表] 被殻形態からみたクチビルマガイケイソウ属Seminavisとフナガタケイソウ属Naviculaの類縁関係2020

    • 著者名/発表者名
      笹野 凪・鈴木秀和・神谷充伸・長田敬五
    • 学会等名
      日本珪藻学会第40回研究集会(オンライン開催)
  • [学会発表] 紅藻ソゾ類の藻体上から見出された海産無縦溝珪藻Falcula sp.の形態と分類学的検討2020

    • 著者名/発表者名
      菅原一輝・太田梨紗子・鈴木秀和・神谷充伸・長田敬五
    • 学会等名
      日本珪藻学会第40回研究集会(オンライン開催)
  • [学会発表] 淡水産管棲珪藻Nitzschia sp.の形態と分類学的検討2020

    • 著者名/発表者名
      牟田神東陽奈・鈴木秀和・神谷充伸・長田敬五
    • 学会等名
      日本珪藻学会第40回研究集会(オンライン開催)

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公開日: 2021-12-27  

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