研究課題/領域番号 |
19K06207
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
冨山 毅 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (20576897)
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研究分担者 |
米田 道夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 主任研究員 (30450787)
海野 徹也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70232890)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 緯度間変異 / 成長速度 / イカナゴ / カレイ科魚類 |
研究実績の概要 |
冷水性魚類において、潜在的な成長速度が低緯度集団で高いとする仮説を検証するため、マコガレイとイカナゴを材料として前年度に引き続き実験を実施した。 茨城県(高緯度)および広島県(低緯度)において漁獲されたマコガレイから生産された全長約40mmの人工種苗(稚魚)を用いて、飼育実験で水温に対する成長の応答を調べた。7つの水温条件(水温14~23℃)で飽食給餌を行ったところ、前年度とは異なり成長が最大となる水温は茨城県産で18℃、広島県産で20℃であった。また、茨城県産の稚魚では低い水温帯での成長速度が広島県産よりも大きく、一方で20℃以上の水温では広島県産の稚魚で成長速度が大きかった。以上の結果は、低緯度の集団で高水温側での成長速度が大きいことから、潜在的な成長速度が高いとする仮説を支持していると考えられた。 イカナゴについて、低水温(16℃)と高水温(21℃)で給餌条件を2つ(高給餌と低給餌)設定して当歳魚の飼育実験を実施した。成長は低水温において高水温よりも良好であったが、肥満度は低水温の高給餌、高水温の高給餌の順に増加割合が大きく、低給餌条件では水温にかかわらず肥満度は同程度に低下した。以上のことから、低水温で成長や肥満度は水温と給餌量の影響を受けることが明らかになり、夏眠時の生残や成熟・産卵に向けて、低水温帯では体長を、夏眠前の高水温帯では肥満度を優先させてエネルギーを投資していると考えられた。 今後、補足的な追試験を行って、成長速度の水温応答における集団間変異を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マコガレイで、高緯度集団と低緯度集団から得た稚魚を用いて水温条件を拡張した実験を実施できた。また、イカナゴでは水温と給餌条件による成長への応答を調べることで、瀬戸内海で近年問題となっているイカナゴの餌不足についても示唆を与える情報が得られていることから、おおむねに進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度と2年目でマコガレイの実験結果に若干の相違点がみられたことから、マコガレイについて高緯度集団と低緯度集団由来の稚魚で水温応答についての最終的な検証を行う。また、イカナゴとマコガレイで得られた知見に加え、既往知見のメタ解析を行い、最終的なとりまとめを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、野外標本の収集や実験を十分に行うことができなかったことで残額が生じた。次年度の予算と合わせて主に物品費として活用する予定である。
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