研究課題/領域番号 |
19K06208
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
柳田 哲矢 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40431837)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ホヤ / 鞭毛虫 |
研究実績の概要 |
日韓のマボヤ養殖で問題となっている被嚢軟化症の原因である鞭毛虫(ホヤムシ)の分布域と宿主範囲を明らかにすることを目的とし、天然の各種ホヤ類を採集して検査した。初年度は、山口県と広島県の瀬戸内海でサンプリングを行い、マボヤを含む複数種の天然ホヤ類を採集した。これらについて、ホヤムシの寄生の有無を顕微鏡観察と遺伝子検査(PCR法)により確認した。その結果、顕微鏡観察でもPCR法でも全ての検査個体が陰性となった。2019度以前の調査結果もあわせ、山口県と広島県の瀬戸内海でマボヤを含む7種のホヤ類を約200個体検査したが、ホヤムシは全て陰性であった。この結果から調査海域にホヤムシが分布していない可能性が示されたが、寄生率が低いために検出されていない可能性もあるため、今後も継続して調査を行う必要がある。 ホヤムシは検出されていない一方で、各種のホヤ類から顕微鏡観察により鞭毛虫が検出されている。これらの一部について遺伝子解析を行った結果、ホヤムシと近縁と考えられる未知の鞭毛虫のリボソームDNA塩基配列が得られた。これまでホヤ類に寄生する鞭毛虫はホヤムシしか知られていないが、他にも未知の寄生性鞭毛虫が存在する可能性が示された。ただし、顕微鏡観察では少数の鞭毛虫しか確認されず、形態学的な検証は行えていない。そこで、液体培地によりこれらの鞭毛虫の分離・培養を試みた。しかしながら、細菌等の汚染がひどく、今のところ鞭毛虫の分離には成功していない。今後はホヤサンプルの滅菌・洗浄などを検討し、引き続き鞭毛虫の分離・培養を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では被嚢軟化症の発生地域である東北地方(宮城県ないしは岩手県)でのサンプリングも行う予定であった。軟化症の発生する3月にサンプリングを計画していたが、中止になった。そのため、当初の計画より進捗がやや遅れていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度も、瀬戸内海における天然ホヤ類の採集を継続する。また、これまでに被嚢軟化症の発生歴がある東北地方のマボヤ養殖場周辺でのサンプリングも実施を予定している。ホヤ類におけるホヤムシ感染の有無は、従来どおり顕微鏡観察とPCR法を併用して調べる。顕微鏡観察でなんらかの鞭毛虫が検出された場合には、液体培地による鞭毛虫の分離・培養を試みる。その一方で、ホヤムシが属するネオボド目鞭毛虫で広く使用できるプライマーを用いたPCRによりリボソームDNAを増幅し、塩基配列を決定する。遺伝的に近縁な鞭毛虫類のリボソームDNA塩基配列とあわせて分子系統解析を行い、ネオボド目鞭毛虫において寄生能が獲得された進化の筋道を明らかにする。
|