研究課題/領域番号 |
19K06209
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 温暖化 / 魚類群集 / 藻場 |
研究実績の概要 |
海水温の上昇が顕著な高知県沿岸では在来の温帯性海藻が衰退し,熱帯性海藻の定着が顕在化している。高知県須崎市久通では,温帯種のヨレモクモドキの藻場が消失し,現在は熱帯種で形成されるホンダワラ藻場(以下,ガラモ場)が発達している。また高知県土佐市萩崎では,温帯種のヤツマタモクが衰退し,熱帯種のマジリモクで形成されるガラモ場が発達してきた。令和2年度では,久通と萩崎のガラモ場の海藻と魚類群集を調査し,その結果を10年前の調査結果と比較することで,ガラモ場の海藻構成種や海藻の季節的繁茂パターンの経年変化が魚類群集構造に与える影響を明らかにすることを目的とした。 調査は2019年10月から2021年3月にかけて須崎市久通と土佐市萩崎で毎月行った。久通では複数の熱帯種(ツクシモク・フタエモクなど)で形成されるガラモ場,萩崎では熱帯種のマジリモクと温帯種のヤツマタモクが形成するガラモ場に1m×20mのトランセクトをそれぞれ5本無作為に設置し,ライン上の海藻の被度と藻丈,魚類の種名と個体数,体サイズを記録した。 2019年10月から2020年9月までのデータを解析し,その結果を2009年10月から2010年9月に同調査地で実施した同様の調査の結果と比較したところ,どちらの調査地でも10年前と比べて温帯性海藻の被度が減少していること,熱帯性海藻の繁茂期間が長くなっていることが明らかとなった。ガラモ場に出現する魚類の個体数は10年前と比べて減少傾向にあり,特に温帯性海藻を利用していた複数の魚種に大幅な減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度では藻場の繁茂期である4-5月にコロナによる活動自粛が重なったために野外実験を実施することができなかった。ただし,それ以外の藻場と魚類群集構造の経年変化の調査については予定通り実施出来たため,概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では前年度に実施できなかった野外実験を行う。また,ガラモ場の魚類群集調査も2021年9月まで継続することで2年間のデータを得る。一方で,最終年度に予定している漁業者への聞き取り調査については,ワクチン接種等の状況を見て実施時期を判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に参加予定であった国際学会(ドイツ)が世界的なコロナ感染拡大によって次年度に開催が持ち越された。また,野外実験を実施することができなかったことで当該年度での実験機材の購入が不要となったため。
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