研究課題
高知県沿岸2か所のホンダワラ藻場(以下、ガラモ場)の海藻と魚類群集を2年間調査し、その結果を10年前に行われた同様の調査と比較することで、ガラモ場の海藻の構成種や季節的な繁茂パターンの変化が魚類群集の構造に与える影響を調べた。調査は2019年10月から2021年9月に須崎市久通と土佐市萩崎で毎月行った。両調査地のガラモ場に1m×20mのトランセクトをそれぞれ5本設置し、SCUBA潜水による目視調査でライン上の海藻の被度と藻丈、魚類の種名と個体数を記録した。久通では10年前に発達していた温帯種のヨレモクモドキからなるガラモ場が消失していた。亜熱帯種によるガラモ場は、10年前よりも亜熱帯種数が増えたことで長い期間繁茂していた。萩崎ではヤツマタモクの繁茂期間が10年前と比べて長くなり、ほぼ通年でガラモ場を形成した。一方でマジリモクは10年前よりも2カ月早く生長し、1カ月早く枯死した。どちらの藻場でも海藻種や草丈の変化に伴う魚類相の変化が認められた。藻場生物を漁獲している高知県の漁業協同組合の各支所に聞き取り調査を行い、各管轄海域の藻場の長期的変化が漁業に対してどの様な影響を及ぼしているのか調べた。聞き取り調査は、2021年12月6日から12月13日に土佐清水市から室戸市までにある計20支所において行った。藻場の減少が起きたのは20~29年前と回答した支所が多かった。藻場の海藻構成種の変化については過半数が「不明」と回答したが、土佐湾中央部の支所では30年以上前から海藻構成種の変化を確認していた。藻場の漁獲物についてはイセエビ以外で漁獲量の減少傾向がみられた。
3: やや遅れている
令和3年度では藻場と魚類群集構造の経年変化の調査および漁業者への聞き取り調査については予定通り実施出来たものの,魚類の行動実験については魚類の採集時期とコロナによる活動自粛期間が部分的に重なったことで十分な種類数と個体数を調べることができなかった。
令和3年度に実施した魚類の行動実験を継続することで,解析に必要な種類数と個体数を揃える。
コロナ感染拡大による活動自粛のため,一部の実験や調査を行うことができなかった。その実験等の継続のために,次年度に必要経費を繰り越す。
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Global Change Biology
巻: 27 ページ: 5262-5275
10.1111/gcb.15759