本研究では、温暖化に伴う藻場の消失や海藻構成種の変化が魚類群集の構造に与える影響を経年観察データから明らかにするとともに、群集構造が変化した要因を各魚種の藻場の利用様式や水槽実験から解明することを目的とした。 高知県田野浦のカジメ群落の衰退と回復に伴う魚類群集構造の変化を調べたところ、魚類の種数と個体数はカジメ消失直後の2017年秋に大幅に減少したが、その後カジメの回復とともに徐々に増加し、2019年にはカジメ消失前と同程度となるまでに回復した。 高知県沿岸2か所のガラモ場の海藻と魚類群集を2年間(2019-2021年)調査し、その結果を10年前に行われた同様の調査の結果と比較することでガラモ場の海藻の構成種や季節的繁茂パターンの変化が魚類群集の構造に与える影響を調べた。その結果、どちらの調査地でも海藻の種類や季節的繁茂パターンに違いがあり、それに伴う魚類群集構造の変化が認められた。この魚類群集構造の変化が、魚類の海藻種(温帯性ホンダワラ類と熱帯性ホンダワラ類)に対する選好性によるものかを7種を対象に水槽実験で調べたところ、いくつかの魚種で海藻種に対する明らかな選択性が認められた。 藻場生物を漁獲している高知県の漁業協同組合の20支所に対して、各管轄海域の藻場の長期的変化が漁業に及ぼした影響について聞き取り調査を行った。藻場の減少が起きたのは20~29年前と回答した支所が多く、藻場の漁獲物についてはイセエビ以外で漁獲量が減少傾向という回答が目立った。
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