研究課題/領域番号 |
19K06214
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
中江 雅典 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (30462807)
|
研究分担者 |
長谷川 功 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (00603325)
佐々木 邦夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (10215717)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | サクラマス / 側線 / 野生魚 / 継代飼育魚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「側線系の受容器数が減少した継代飼育魚は,生存や成長で不利になるのか否かの検証」を,サケ科サクラマスを用いた飼育実験により行い,養殖・放流事業や進化生物学分野等へ基礎的データの提供を行うことである.そのために,野生魚と継代飼育魚を用い,(1)競争関係を考慮した野外における生存・成長に関する実験,(2)被食実験,および(3)採餌実験の3実験を設定し,側線の受容器数との相関関係や野生・継代飼育といった由来間での差異の検討をする予定である. 2019年度は主に(2)被食実験の一部を実施した.被食実験は,水槽またはエンクロージャー(縦・横・高さが各1mの生け簀)に実験魚(継代飼育魚・野生魚)と捕食者を入れ,逃避行動や生残を比較するものである.2019年度はその前段階として,継代飼育魚を用いて,暗条件(照度1以下)および明条件において,捕食者を模した可動障害物(動作時も無音)からの逃避行動を観察・記録し,各個体の側線の受容器数も記録した.現時点での仮解析では,明条件と暗条件間で逃避行動に明確な差異が認められるものの,同一由来(継代飼育魚)内では,側線の受容器数と逃避行動には相関関係が認められないとの結果を得ている.今回の実験データは,2020年春に行う野生魚を用いた同一実験で得られるデータとの本解析のため,今後,重要なものとなってくる. その他,実験(1)に必要な2020年春~夏の河川へのエンクロージャー設置許可の取得および実験(1)と(3)に用いる野生魚の特別採捕許可の取得を終え,実験(1)用の継代飼育魚の成長調整を行うなど,2020年度に行う本格的な実験のための手続き・準備を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で用いるサクラマスは,2~6月に実験に適したサイズになるため,これらの期間以外では主な実験は行えない.よって,2019年度は2020年2~6月の実験のための手続き,準備および予備実験を予定通り行った.また,本研究の実験で重要な点は,同じ産地(北海道尻別川水系)由来の野生魚と継代飼育魚を用いることにある.よって,現在は本州で飼育されている継代飼育魚について,実験時に野生魚と同サイズになるように成長抑制も進めた. これらを鑑み,2019年度は概ね予定どおりに進展したと判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
先述のとおり,本研究で用いるサクラマスは,2~6月に実験に適したサイズになるため,今回の新型コロナウイルス感染症拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出等の社会情勢は,本研究の推進に大きな痛手となる.2020年5月実施予定であった2実験については,6月への順延および2021年度への延期等の調整を行っている.一方,野生魚については対処方も限られており,緊急事態宣言の延長等の場合には,2020年度の実験実施の見通しは厳しいと言わざるを得ない.
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験魚の成長を検討し,一部の実験を2019年度末から2020年度春へ微調整したため(想定の範囲内).
|