研究課題/領域番号 |
19K06218
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
板倉 信明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (80212976)
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研究分担者 |
児玉 工 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (20586119)
西村 絵美 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (30708003)
藤井 陽介 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (60782349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中小漁業 / 沖底 / 経営展開 / 経営継続 / 水産政策 / 水産政策改革 |
研究実績の概要 |
本研究は、水産政策改革後の中小漁業経営体が経営を存続させるための方向性(経営のあり方)を解明することを課題とする。研究1年名は、調査対象の存立条件と経営継続のへの問題点の把握、2年目は把握した問題点を解消するための方策の検討、3年目に当該対応策の検証を行う予定である。1年目の2019年度は、まず過去に収集していた調査資料の再検討により、存立条件と経営継続のための問題点の析出の試行段階としての分析を行った。 分析の対象としては、西日本地域のA地区及びB地区の沖合底びき網漁業(以下、沖底と記す)である。A地区の沖底は鮮魚出荷を主体とするのに対して、B地区の沖底は、加工原料供給を主体とするものである。こうした出荷形態の違いは、航海日数・航海数、漁場という生産面での違いとなり、それが経費面での違いとなって収益生の違いとなっていることが分かった。近年では需要が低下する中で、一部の魚種を除き、魚価の低下という環境を迎え、経営を継続させるための方策を構成する要素が異なっていることが分かった。鮮魚対応の地区であれば、地元及び地元外の市場における水産物需要の変動への対応として個々の経営体の経営戦略、すなわち魚種構成、出荷する漁獲物の形態の選択(鮮魚、活魚、氷蔵、冷凍などの形態別構成)、出荷市場の選択(地元市場のみ、近隣市場への直出荷などの選択)が重要であることが分かった。他方、加工原料供給を主体とする経営体の場合、個々の経営体が選択する経営戦略以上に、背後地にある加工業者の盛衰が沖底経営体の経営継続に対して大きな影響を与えることが分かった。他方、改革された水産政策は、経営継続の可能性の高い経営体の存続を求めており、また地域よりも国内レベルでの水産物供給の安定化を図る点を相対的に重く考えているように見受けられる。個別経営体独自の経営存続方策の構築が急務となっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の方向性に対する迷いがあった。海外事例調査に主体を置くか、国内事例調査を主体にするかである。結論としては、当初の想定通り国内事例での結果を海外事例と比較分析することにしたが、国内事例の分析結果のとりまとめが遅れてしまい、結果として海外事例の調査を今年度は行うことが出来なかった。国内事例の分析の遅れは、研究課題の絞り込みの不充分さであったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
国内事例の存立条件及び問題点の把握は進めるための基礎的な事項を確認出来たのでこれを元に、国内調査事例を進めたい。また、その結果を海外事例と比較することで、客観的な評価を行いたい。なお、コロナウィルス感染症の動向が懸念される。無理をしない範囲で、実施時期は判断したい。結果、本年度末には、海外事例との比較調査は不確定要素があるので今後適宜検討するとしても、国内事例における当初計画した、調査対象地における経営継続のための問題点の把握及びその方策の検討の段階に及びたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存資料の再検証を優先したことよる当初予定していた事例調査(国内及び海外)を2019年度に行わなかったために生じたものである。 次年度は、国内旅費90万円(調査:山陰、北陸、東北、北海道の4地域、各地域1~2地区 ・2回、資料収集4回、学会参加4人2回)、海外調査旅費:90万円(6~9日、3人)、物品費30万円、その他20万円の使用を予定している。なお、海外調査はコロナウィルス感染症の状況にいて実施の可否を検討する。したがって、2年目で実施出来ない場合は3年目へ変更する場合もあり得る。
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