研究課題/領域番号 |
19K06223
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
塩崎 一弘 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (70390896)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Edwardsiella tarda / シアリダーゼ |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究において、宿主細胞の糖鎖構造の変化がEdwardsiella tarda(E. tarda)の感染に影響を与えることが分かっている。特に、リソソームに局在し糖鎖の異化分解を制御するシアリダーゼNeu1が重要であることが明らかになっている。ゲノム編集により作出したNeu1ノックアウトゼブラフィッシュを用いてE. tardaの感染試験を行ったところ、Neu1-KOで斃死魚数が著しく増加し、免疫細胞のプロファイルが変化していた。この結果から、リソソームにおける脱シアリル化がE. tardaの感染を制御する因子であることがin vivoでも明らかになり、今後はこの詳細を解明する必要がある。 またE. tardaのシアル酸代謝系についても解析した。以前の我々の研究から、E. tardaの宿主からの脱シアリル化が顕著なほど病原性が高くなることが分かっていたが、その詳細については不明であった。本年度はシアル酸の代謝酵素群に注目して、病原性との関連を検討した。その結果、E. tardaには主に3種のシアル酸代謝系が存在し、それらの遺伝子を過剰発現させたバクテリアでは、その感染能が有意に増加していた。そこで、これら遺伝子導入株での遺伝子発現プロファイルを検討した結果、シアル酸トランスポーターの発現が亢進し、その下流分子も活性化していることが見いだされた。一方、細胞増殖やリポ多糖生産量はこれらシアル酸代謝酵素高発現細胞では変化していなかった。シアル酸代謝亢進による病原性の亢進メカニズムについては不明な点が多く残されており、今後の検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度も引き続き、バクテリアおよび宿主細胞の両面から糖鎖リモデリングと感染の相互作用について解析を行った。我々が特に注目するシアロ複合糖質に関しての項目として、遺伝子ノックアウトゼブラフィッシュの作出と性状解析、さらに魚類におけるデアミノノイラミン酸(KDN)の加水分解酵素の同定に成功し、論文として発表した。さらにE. tardaにおけるシアル酸代謝酵素3種の遺伝子クローニングに成功し、この成果はデータベースに公開している。 一方、シアリダーゼ欠損ゼブラフィッシュのE. tarda感染促進のメカニズム、およびE. tardaシアル酸代謝酵素の感染増強メカニズムについては不明な点が多く、解析を急ぐ必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度も予定通り申請書に従い研究を進めていく計画である。本年度は申請の最終年度として、シアリダーゼ欠損ゼブラフィッシュのE. tarda感染促進のメカニズム、およびE. tardaシアル酸代謝酵素の感染増強メカニズムについて主に検討していく。魚類や魚類由来培養細胞は使用できる抗体や遺伝子情報が限られていることから、メカニズムの解明には次世代シーケンサーの使用や哺乳類由来培養細胞の使用も検討する。
|