研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュにおける光による体色変化のメカニズムを明らかにするとともに、この現象を応用してニシキゴイの新しい色揚げ技術の確立を目指すことを当初の目的とした。当該年度は、ゼブラフィッシュについて、成魚の体色とメラニン凝集ホルモン(MCH)の脳内発現量に背地色と照射光がもたらす効果を検証した。その結果、背地色が白く、太陽光を模したLED光と紫外線を合わせて照射したときにMCH発現量は最も高くなるが、照射光によるMCH発現量の変化は体色変化に寄与しないことが明らかとなった。ニシキゴイについては大正三色の体色が変化しにくい原因の解明を目指し、MCHなどの産生分泌動態の解析を行なった。その結果、体色の明るさとMCH遺伝子の脳内発現量はマゴイでは背地色によって変化するが大正三色では変化しないこと、マゴイと大正三色においてMCHの血中濃度は背地色の違いに応じて変化しないこと、大正三色では、体色調節ホルモンのバランスがマゴイに比べて偏っていることが明らかとなった。以上の結果は、マゴイにおいて脳内で産生されるMCHが他の何らかの体色調節ホルモンの血中量を調節すること、ならびに大正三色では脳内のMCH量が背地色に応じて変化しないために他の体色調節ホルモンの血中量が変化せず、体色がほとんど変化しないことを示唆する。本研究により、当初の目的であった、照射光による大正三色の色揚げは困難であることが示唆された。一方、マゴイにおいてMCHが血中ホルモンではなく他の体色調節ホルモンの調節因子として機能し、体色調節に中心的な役割を果たすという既成概念を覆す発見が得られた。大正三色におけるMCH遺伝子発現の異常は、ニシキゴイの体色が「濃くなるように」選抜されてきたことを示しており、今後、ニシキゴイの色揚げ技術を開発する上で内分泌学的なアプローチが重要であることを示唆するものである。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 312 ページ: 113860~113860
10.1016/j.ygcen.2021.113860
https://www.kitasato-u.ac.jp/mb/lab/bunshi/