研究課題/領域番号 |
19K06229
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小林 靖尚 近畿大学, 農学部, 准教授 (10643786)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軟骨魚類 / 卵巣 |
研究実績の概要 |
現在、世界中でサメやエイなどの軟骨魚類の資源量は急減しており、実に1/4の種が絶滅の危機に曝され、緊迫の問題となっている。しかし資源保護に必須な軟骨魚類の繁殖生理に関する知見は限られている。本研究課題では、組織栄養型胎生の繁殖様式を持つアカエイをモデルとして、子宮内でおこる胎仔の性分化を解明する事を目的としている。しかしながら、本年度は研究対象であるアカエイを扱う事が困難であったことから、軟骨魚類の繁殖生理に関する知見を収集する事を目的として、アカエイと同じく子宮を持ち卵胎生型の繁殖様式を持つエイ二種(トビエイ、ツバクロエイ)とサメ二種(ホシザメ、ドチザメ)の卵巣構造を解析した。 組織観察を行った全ての種に共通して、卵巣はエピゴナル器の背側寄りに存在していた。卵巣内には、様々な発達段階の卵胞が確認されたが、未熟な卵胞は背側の表層部分に局在し、発達した卵胞はエピゴナル器の内側に位置する傾向が見られた。またエイ二種の卵巣はエピゴナル器に密に埋没していた。一方、サメ二種の卵巣内には脂肪細胞が多く観察され、エピゴナル器と卵巣の境界が明瞭であった。またP450 cholesterol side-chain-cleaving enzyme (SCC)に対する抗体を用いた免疫染色では、ホシザメの卵巣内にある卵胞の莢膜細胞において特異的な反応が観察された。次にホシザメの異なる発達段階の卵胞莢膜細胞におけるSCCの発現を調べた。その結果、卵巣表層付近の未熟卵胞の莢膜細胞には、免疫陽性反応が見られなかった。しかし卵巣内側の発達卵胞の莢膜細胞に強い陽性反応が見られた。そのためホシザメでは、卵胞が発達しエピゴナル器に移動した後に、莢膜細胞にてステロイドホルモンを産出すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ過の影響で、本研究で扱う予定だったアカエイのサンプルの確保が困難であった。代替として入手可能で有った軟骨魚類の卵巣構造の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
サンプル確保の状況によるが、複数種の軟骨魚類を扱う事が可能となってきたので、アカエイ以外の軟骨魚類の卵胞形成過程に関する研究を進める。またこれまでに蓄積したアカエイ胎仔のサンプルを用いて、胎仔の生殖腺の性分化過程を引き続き進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ過の影響により、軟骨魚類アカエイのサンプリングを計画通り行う事が困難であった。そのため次年度使用額が生じた。今年度はアカエイのサンプリングを集中して行い、解析を進める。しかしながら状況によってサンプリングが不可出会った場合を考え、他魚種(ホシザメ、ナヌカザメ)を用いる事を計画している。
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