研究実績の概要 |
現在, サメやエイなどの軟骨魚類の資源量が急減しており, 緊迫の問題となっている. しかし資源保護に必須な軟骨魚類の繁殖生理に関する知見は少ない. そこで本研究課題では, 卵胎生型の繁殖様式を持つアカエイ胎仔の性分化過程に関する解析を行った. すでに母体子宮内においてアカエイの胎仔の外部形態が性分化している事実を明らかにしているが, 生殖腺の性分化過程は明らかとなっていない. そこで本研究では最初に, 体盤形成途中にある胎仔を観察した. その結果, 体腔上皮由来のエピゴナル器の原基が観察され, 内部には数個の大型の生殖細胞が散在していることを明らかにした.しかし, その形態や,生殖細胞の数や局在には, 個体差が見られず,性的二形は確認出来なかった.そのため,この発達段階にある胎仔の生殖腺は,性的未分化であることを明らかにした.生殖腺の性分化は, 体盤形成が完了しつつある胎仔において観察され, その特徴は生殖細胞の局在の違いにある事を組織学的に明らかにした. この生殖腺の性分化に対する内因性の性ステロイドホルモンの役割については明らかにする事は出来なかった. また生殖輸管の分化を観察した所, 他の脊椎動物とは異なり, アカエイではミュラー管の分化が先に起きる事を明らかにした. また軟骨魚類の繁殖に関する知見を増やすために, 様々な軟骨魚種 (コモンサカタザメ, カスザメ, スミツキザメ, エイラクブカ, シビレエイ, フトツノザメ)の生殖器官の形態観察を行った. その結果, 軟骨魚類の生殖腺の共通性 (卵巣内における卵母細胞の局在)について明らかにする事ができた.
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