高温処理(HST)を2回行うことが有効となる機構の解明の一助として、さらなるHST回数増による刺激の強化、および全処理時間(2分)の均等分割による1回あたりの刺激の緩和を試み、その変化を調べた。 紫外線照射精子を卵に媒精し雌性発生を誘導した。これらの卵を、水温20℃の水槽に撒き、底に並べたすりガラスに付着させた。HSTは、卵を40.5℃の温水に浸漬して行った。また、無処理の精子を媒精した通常発生対照区(IC)、およびHSTを行わない雌性発生対照区(GC)を設けた。実験Ⅰ: 最初のHSTは接水後25分から開始し、その後10分あるいは15分間隔で1~6回のHSTを行う計12区(10-1~10-6、15-1~15-6)を設けた。実験Ⅱ: 2分間のHSTを1回~4回で均等分割し、処理間隔を10分あるいは15分とする計8区を設けた。孵化期に各孵化仔魚の形態と倍数性を判定した。 実験Ⅰ: 生存率はHSTの回数に伴い低下し、5回以上では孵化しなかった。孵化仔魚中の二倍体の割合は、1回処理で8.9%だったものが、10-2で24.2%、10-3で81.9%、15-2で61.4%、15-3で70.2%と回数増加に伴って増加傾向を示した。HSTを15分間隔で行った場合は、3回以上の区で四倍体の割合が増加した。奇形個体の割合はHST2回、3回で低下する傾向がみられた。実験Ⅱ: GCで5.7%だった二倍体の割合は2分のHSTを1回で行うと23.6%となり、処理を2分割すると10分間隔では45.5%、15分間隔では78.5%となった。さらに分割を4回とすると、生存率、二倍体の割合は減少し、奇形率は10分間隔では3回、15分間隔では2回のHSTで減少傾向がみられた。以上から、本種の雌性発生卵の倍数化には熱刺激1分間を2~3回反復することが有効であることがわかった。
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