農家の高齢化や後継者不足が進んだ1980年代中頃から増加傾向にある遊休農地は,2019年現在で9.1万haとなっており,食料自給率の低下,生物多様性の喪失,野生鳥獣による被害,不法投棄の誘発,洪水時の災害リスクの増大など,地域住民にとっても様々な問題を引き起こしている.そこで,本研究では,遊休農地の担い手への集積に資するため,2015年から公開の始まった農地情報と地図情報から,所有者の意向(売りたい・貸したい,自ら耕作したい)を予測した. 耕作放棄の影響が顕在化しやすい首都圏内2地域(意向が把握されている遊休農地の数が多い水戸市茨城県と勝浦市千葉県)を対象に,機械学習の1つであるサポートベクターマシン(SVM)を用いて意向を分類した結果,学習データのみでなく,検証データにおいても高い予測精度が得られた.今回学習させた分類器を用いれば,現在,所有者意向が把握されていない大半の遊休農地のなかから,どの農地が売り貸しに出されるのかを,いち早く予測することができると期待できよう. また,SVMは因果関係を知ることができないため,プロビット回帰分析を実施して,所有者意向の要因を探った.その結果,区画が整理されていないことや,最寄りの道路までが遠いことなど,生産性や便の悪さが売り貸しに出される要因となることが予想された.なお,推定されたプロビット回帰モデルを用いて検証データを分類予想した正解率は極めて低いことから,本課題におけるSVMの有効性が確認された.
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