研究課題/領域番号 |
19K06253
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
山口 哲由 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (50447934)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 山地 / オオムギ栽培 / 積算温度 / RGBVI / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
今年度はインド北西部の山岳地域であるラダックに設置していた自動温度計と自動カメラによる気温データと圃場写真を用いて,同地域における地球温暖化と農業生産との関係を明らかにするための分析をおこなった。これらの機器は,ラダック西部の1つの調査村を対象として,そのなかの標高が異なる4つの集落(標高3000m,3300m,3700m,4000m)に設置し,2012年から2018年までのデータを収集できている。 集落間の差異や圃場写真に基づいて年ごとの播種や灌漑,収穫の期日を把握しながら,オオムギ栽培における積算温度の計算をおこなった。その結果,オオムギの栽培期間は積算温度に基づいて調整される傾向が見られた。一方で,もっと標高が高い集落では明らかに収穫までの積算温度が異なっており,特に高い標高の寒冷な環境に対応したオオムギ品種が導入されている可能性が考えられた。 さらに圃場写真に関してはRGBVIという指標を用いた分析をおこなった。衛星画像などから植生の活性を測る時にはNDVIと呼ばれる指標が用いられるが,NDVIの計算には近赤外画像が必要なため,JPG画像などから植生の活性を測る場合には,近赤外画像を用いないRGBVIが用いられることが多い。自動カメラの圃場写真を用いて播種以降のRGBVI値を経時的にプロットすることで,オオムギの生育ステージである穂孕み期や出穂期を推定できる可能性が示された。 これらの成果を2023年3月に日本地理学会大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の流行によって現地調査をおこなうのが難しい状況は続いているが,同地域では継続にデータを収集をおこなっており,それらの分析をおこなうことで研究は進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に分析をおこなった成果と,これまでに収集してきた同村落に関する地籍図や作付け地図と複合させて分析することにより,調査村における社会変化と地球温暖化による影響の2つの側面を織り込んだうえで,近年の山地社会における地球温暖化の適応策を描くことを目指す。これにより山地社会が置かれている現在の困難な状況を示すとともに,地球温暖化という共通する問題への対処する方策を議論していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は2022年度にインドに渡航してラダックにおける現地調査を実施する予定であったが,当該の地域ではCOVID-19の流行の影響が強く残っており,渡航できなかった。それゆえに予算計画に狂いが生じたが,今年度は入念な準備をおこなってインドへの渡航を目指し,ラダックにおいて設置している自動温度計と自動カメラのデータ収集をおこなうとともに,インタビュー等も実施して,山地社会における地球温暖化への適応策の全体像を把握する。
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