研究課題/領域番号 |
19K06261
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研究機関 | 北海商科大学 |
研究代表者 |
阿部 秀明 北海商科大学, 商学部, 教授 (60183141)
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研究分担者 |
相浦 宣徳 北海商科大学, 商学部, 教授 (30333149)
伊藤 寛幸 北海商科大学, 商学部, 准教授 (40823430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 物流ネットワーク / 物流の強靭化 / 食糧基地北海道 / 地域間産業連関構造 / 食品加工サプライチェーン |
研究実績の概要 |
北海道は、四方を海に囲まれるなど物流にとって不利な立地条件の下で、日本の食料基地として農畜水産品や加工食品を全国に送り食生活を支える重要な役割を果たしている。しかし、この物流に大きな陰りが生じている。それは従前からの課題に加え、昨今顕在化したトラック運転手不足、船舶輸送のSOx排出規制強化、JR北海道の営業区間の見直し、青函共用走行問題等が相乗し、北海道の貨物輸送環境は非常に厳しい状況にある。 そこで本研究では、北海道の基幹産業である食産業の競争力維持・強化に向け、その要である「物流」の果たす役割と昨今顕在化した上記の課題を検証し、その対策とともに強靭な物流ネットワーク構築に向けた具体策を提案するものである。初年度(2019年度)の研究実績としては、本研究で導出する物流ネットワーク効果の基礎データとして、①「物流に関する北海道内の地域性」と、②「北海道物流の道外他地域に対する特異性」を地域間・産業間の連関構造表をベースに、物資流動データと輸送手段のリンク(紐付け)を図り、道内・道外間ネットワークの特徴を整理・検討を試みた。その結果、主に次のような研究成果が得られた。1)北海道は、わが国の食料基地として農水産業はもとより、特にアグリビジネス分野の食品製造業は重要な産業であり、道内経済を牽引する役割が極めて大きいこと。また、2)製造業全体に対する飲食料品部門の粗付加価値率が高まっており、とりわけ乳製品や水産品といった北海道の1次産業と関連した食料品製造業が大きく貢献している。3)最も重要なことは、そうした中間財や最終生産財を道内・道外間へ輸送する物流ネットワークが効果的に機能することで達成される点を強く指摘した。次年度では、道内外間ネットワークの輸送条件の相違・特徴を通じて道内・道外間の輸送モードが抱える現状と課題について分析・検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況として、まず①「物流に関する北海道内の地域性」では、道内各地域における物資流動特性と産業構造の関係等について、まずは、産業構造の関係性把握のために既存(H17年・H23年)の北海道内の地域間産業連関表に基づき感度分析を行った。次いでH23年の地域産業連関表を基に、道内6圏域における地域間産業連関表に組換え(推計)、道外地域間の連関構造と整合性のチェックに努めた。加えて、その結果の妥当性を物資流動の視点で特性等を把握するために運輸業界へのヒアリング調査を実施した。一方、②「北海道物流の道外他地域に対する特異性」では、道外他地域(8ブロック圏域)の産業構造の特異性と物流ネットワークを比較対象とし、地域間・産業間の連関構造表をベースに域外間輸送等における条件の相違や特徴について整理・分析を試みた。そこでは、産業構造の特異性として府県と比較し北海道の多くの産業が競争力の乏しい中にあって、飲食料品は、主に中間財供給先である関東・関西等のサプライチェーンに対して、効率的な物流ネットワークにより高い貢献をもたらし、比較的競争力が高く(他地域と比較して比較優位性)、かつ域際収支でも黒字の大きなアグリ産業となっていることが再確認された。しかし、物資流動データと輸送手段のリンク(紐付け)を図るための連関表の組み替え等に十分な時間を注ぐことができず、引き続き次年度においても継続研究とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、初年度の積み残しであるリンク(紐付け)を図るための連関表の組み替え作業とともに、「北海道内・道外間輸送」におけるネットワーク上の課題を整理・検討し、その影響を道内地域別・道外間地域別に推計する。推計にあたっては、道内6圏域と全国8ブロック(北海道を除く全国)との連結・統合型の地域間産業連関モデルを援用する。この基で、北海道・道外間の物流ネットワークの貢献度(経済効果)を導出する。また、台風をはじめとする自然災害や人為的災害等の不測の事態が発生した場合の経済的影響(輸送力低下による経済的損出額)の推計とその対策(輸送モード間の代替輸送体制)についてシミュレーション分析を通じて試算・検討する。 同時に、テーマ3として、北海道・道外間の物流ネットワークの在るべき姿を検討・提案する。こうして得られた脆弱性と影響度から、北海道の移出・移入からみた全国の物流ネットワークの在り方(e.g.区間ごとの輸送力の増強、輸送モードの多様性の保全)について、分析し検討を加える。 他方、テーマ4として、食料基地北海道の生産現場である農業関連分野の物流効率化に向けた課題について分析・検討する。具体的には、片荷解消・運転手不足・集配等の労働力不足に対する対応として、パレット輸送の取組と課題、共同輸送・往復物流の取組と課題、集配拠点やストックポイントの最適化と備蓄センターの地理的・空間的整備の提案など、輸送効率化に向けた施策を提案する。また、季節波動と片荷解消策に向けては、ピーク・カットによる標準化を想定し、貯蔵等を通じた出荷調整+加工転用の実現性について分析・検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた物流事業者へのヒアリング・アンケート調査等であるが、調査内容・アンケートフォームを再検討する過程で、今年度は、近郊の関係団体や事業者に対する事前ヒアリング調査のみを実施した。そのため、当初予計画した調査フォームやデータ処理等の外部委託費は、次年度に計画を変更し実施することとした。また、今年度のヒアリング調査は、道内近郊エリアに限定したため、予定した旅費支出が発生しなかった。次年度(2020年度)では、道内外に向けた本格的な調査を実施する予定である。なお、当初計画では、2020年1月末から3月に掛けて道外の運送事業者や関連団体へのヒアリング調査を予定していたが、コロナウイルス感染拡大を避けるため主に関東・関西・九州の調査を断念した。こうした背景により、当該年度の支出実績が計画通りに進まなかった。したがって、次年度には、翌年度分として請求した助成金と合わせた実施計画で遂行する予定である。
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