2023年度は、これまで視線計測と質問紙調査で実施した情報過負荷の発生状況について、これまでの研究を整理したうえで実験デザインを作成し、脳活動計測を用いて検証を行った。食料品店舗には膨大な種類の商品が陳列され、農産物やその加工品についても、産地や生産者の情報から健康機能性に関する情報まで、多種多様な情報が提示されていることから、情報過負荷のなかでも「選択肢過多」と「情報量過多」の検証を行った。検証にあたり、申請者らのこれまでの研究を踏まえて、「選択肢過多」では、品種名、産地、価格、パッケージ、量目の異なる架空の米を15種類提示する画面と5種類提示する画面を用意した。「情報量過多」では、3種類の米を提示し、商品に関する情報を 12 属性(品種名、産地、価格、パッケージ、量目、JA 名、生産者名、QR コード(URL)、環境負荷、味の特徴、登録商標、生産方式)を提示する画面と 6 属性(品種名、産地、価格、パッケージ、量目、JA 名)を提示する画面を用意した。 実験では、脳活動に関連する血流量変化を近赤外光によってモニタリングを行う2chウェアラブル携帯型脳活動計測装置(HOT-2000、株式会社NeU)を使用した。同機器を被験者に装着したうえで、スクリーン上と口頭で、米を購入する状況を想定してもらい、商品を選択してもらった。なお、機縁法により募った高齢者3名を対象に実験を行った。 現在、脳活動の血流変化について分析を行っているものの、「選択肢過多」と「情報量過多」のどちらにおいても、選択中の不快感を示すような明確な傾向は確認できていないため、継続して分析を行っている。ただし、脳活動計測と併せて実施した質問紙調査では「情報量過多」に対して負担感を抱いている傾向があり、部分的に情報過負荷が発生していることが確認された。
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