研究課題/領域番号 |
19K06266
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大西 千絵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 主任研究員 (60466638)
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研究分担者 |
森嶋 輝也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, グループ長 (30391486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 6次産業化 / シミュレーター |
研究実績の概要 |
改良型6次産業化シミュレーターLASTSのプロトタイプを開発し、フランス・モール山塊の栗とモンフュロンの小麦を用いた6次産業化の事例について分析を行なった。現行版LASTSは、先行研究ならびに複数の6次産業化の事例を分析した結果をもとに,数式を導き出し,策定したものである.LASTSの特徴と独自性は,加工業者/加工部門や販売業者/販売部門が農産物に与える付加価値を数値化する点にある.そして,数値化された付加価値と6次産業化の部門構造・連携構造から,売上シミュレーションを行うことができる.現行型LASTSとプロトタイプの違いは、A-scoreを評価できるか否かである。A-scoreはバリューチェーンのある段階の取り組みについて、農業の寄与分を表したものである。農業にとって有利または不利な取引であることを示すことができる指標である。さらに現行型LASTSは評価対象が4件であるのに対し、プロトタイプでは12件となった。 改良版LASTSを用いて,栗を始点にした評価と,小麦を始点にした評価を行なった結果,栗の6次産業化の取り組みでは,一次加工部門に課題があることを明らかにした.次に,栗の6次産業化の取り組みの課題を解決するために,5つの解決策についてシミュレーションを行なった.事例の取り組みでは,LASTSによる評価とシミュレーションを通じて,課題を明確化し,より良い改善策を検討することが可能となった. モール山塊の栗生産組合に分析結果について報告した際、栗生産組合では一次加工でプラスアルファの価値が生じていないことに気がついていなかった。よって、現行型ならびにプロトタイプ版LASTSで6次産業化の取り組みを評価し、課題の改善を行うことは、6次産業化の推進の役に立つと考えられる。 なお、プロトタイプ版LASTSは、修正を加えた上で、2020年度にプログラムの著作権を登録する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者と分担者による海外調査を予定していたが、スケジュールが合わず、2019年度は実施できなかった(研究代表者のみ別の予算で海外調査を実施し、本研究課題と合わせることで科研費国際共同研究Aが採択された)。したがって、改良版LASTSへのブランド評価機能の追加については、2020年度に調査とプロトタイプの改良を行う。 一方で、6次産業化シミュレーターLASTSの改良は、予定より早く進んでいる。2019年度末に改良版LASTSのプロトタイプが完成した。現在はプロトタイプ版(改良型LASTS)をエクセルアプリ化し、プログラムのセキュリティ面の向上に取り組んでいる。 また、戦略的6次産業化モデルを策定するために、2019年~2020年にかけて、全国すべての都道府県庁ならびに全国の農業改良普及機関453件に対して郵送型アンケートを実施し、142件から回答を得た(回収率31.3%)。回答について研究資料ならびに論文の形で報告する予定である。 また、関連課題として科研費国際共同研究(A)を獲得した。
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今後の研究の推進方策 |
A-scoreを付け加えた改良版6次産業化シミュレーターLASTSを、2020年度にプログラム登録(著作権登録)する予定である。著作権登録後、6次産業化のステークホルダーや行政・研究機関にプログラムを配布し、さらなる改良につなげる。 さらに、ブランド評価機能を付け加えるために、2020年度にプロトタイプを策定するとともに、事例調査を実施し、ブランド評価とシミュレーションを実施する。ブランド評価機能を付け加えたLASTSについても、プログラム登録する。 そして、戦略的6次産業化モデルを策定するために実施したアンケート結果について、集計、分析を行う。分析結果については、研究資料ならびに論文の形で報告する予定である。 また、本課題の関連課題として、科研費国際共同研究Aを用いて、フランス国立農学研究所と共同研究を実施する。国際共同研究では、2019年度改良版LASTS、2020年度改良版LASTSを用い、農業政策・地産地消・農業の持続可能性の観点から研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と分担者のスケジュールが合わず、共同で海外調査ができなかった。それに伴って、物品費が減少し、人件費を使わなかったため。 次年度使用額と次年度の予算を元に国内・海外調査を実施するとともに、それに関連した物品費、人件費を使用する予定である。 また、次年度使用額は、アンケート結果の分析ならびに公表にかかる予算(資料作成、論文報告)でも使用する。
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