研究課題/領域番号 |
19K06267
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研究機関 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
研究代表者 |
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70356327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域食料プロジェクトPAT / フランス / イタリア / ルーラル・ジェントリフィケーション / 地産地消 / 都市食料主権 / キャンティ |
研究実績の概要 |
フランスにおけるプロジェクトとしての都市食料主権について、これまでの研究を整理した。都市農業は農地の転用をにらんだ、農地価格の上昇期待もあり、積極的には農業振興が行われていないが、有機農業や学校給食への地場産農産物の調達といった、都市及び広域行政の首長たちの配慮により、都市農業振興が行われる事例も見られる。さらに2014年のフランス農業基本法により「地域農業プロジェクトPAT」が制定され、広域行政を中心に、地産地消的な取り組みが見られるようになっている。農業法における「地域territoire」の登場は、1999年の、やはり社会党政権の下での農業基本法における「経営に関する地域契約CTE」に見られた。中道右派政権が政権に返り咲くとすぐにこのCTEは廃止されてしまったが、今回のPATは社会党からマクロンの「共和国前進」党への移行後も、積極的に取り組まれている。これには、かつてニッチなイノベーションでしかなかった地産地消(AMAPなど)や学校給食への地場産品調達などの試みが、メインストリームへと統合されたことで、こうした動向は揺るぎないものとなった。こうした食料レジームの変容は新型コロナにより加速されている。 またイタリアにおける農村振興の多様性についてトスカーナ州キャンティ地方を事例に、資料の収集と分析を行った。イタリアは農地の価格が高く、4万153ユーロ/haであり、フランスの6,060ユーロを大きく上回り、新規就農をいっそう困難にしている。イタリアのルーラル・アーバニゼーションは、キャンティ地方の農村振興に影響を及ぼしている。海外の富裕層を対象とした、テロワール産品(ワインやオリーブ)とアグリツーリズモにより農村振興が見られる一方で、フィレンツェ等の近隣都市への地産地消的な農業振興、連帯農業運動GASなどによる社会連帯経済的な地域振興の展開も見られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナの影響により、現地調査ができず、インターネットによる資料収集と、既存の文献の分析によってしか、研究を進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの状況次第であるが、現地調査を行う予定である。また現地調査が不可能な場合、フランス及びイタリアの研究者や行政担当者、生産者代表とのズーム会議などを行い、情報収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、フランスへの現地出張が不可能であったため。
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