研究課題/領域番号 |
19K06267
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研究機関 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
研究代表者 |
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70356327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス / テロワール / 農業 / 規格化 / 地域食料プロジェクト / ルーラル・ジェントリフィケーション / イタリア / 地域 |
研究実績の概要 |
脱炭素化を通じた経済成長戦略が、先進各国の農政において急速に広まっている。高い環境的レベルでの農産物の規格が国際貿易において事実上の標準となろうとしているなか、ICT技術の活用、より効率的な農薬・肥料の使用のための農業投資が進行中である。国際競争力を獲得し、農業の世代交代を促進するためにもこうした高いレベルの環境効率的な投資への助成が課題となっている。一方、競争力ある個別経営の強化と同様、中小規模の経営の地域への根付きも、各国において重要な課題と位置づけられている。競争力ある経営体の育成と地域レベルでの農業の維持、という時として矛盾した農業戦略を両立させるのはしばしば困難である。本研究課題はフランスを事例に、競争力ある農業経営体の育成と地域への農業の埋め込みについて、農業と食品、農村をめぐる近年の動向について規格化という観点から検討を行っている。 具体的な研究としては、イタリアとフランスの、地域に特徴的なテロワール産品を通じたルーラル・ジェントリフィケーションについての比較研究に着手した。テロワール産品の「典型性」がどのように地域のアクター(市場関係者や農業普及員、消費者等)により構築されるかを解明するための事例を収集した。イタリアのキアンティ地方におけるキアンティ・ワインによる事例をとりまとめ、現在、フランスのサヴォワ地方のチーズ(ボーフォール、アボンダンスなど)の事例について資料を分析しているところである。 このようなテロワール産品による農産物と農村の高付加価値化とならんで、コロナ禍により明らかとなった食料や栄養をめぐる社会的格差を是正するための方策として、フランスの「地域食料プロジェクトPAT」についての現状をフォローした。PATのような食料民主主義の習慣を地域が身につけるための柔軟体操(J.C.スコット)の必要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス蔓延により、本研究課題での海外での現地調査を1度も行うことができなかった。また所属する研究機関への出勤回数が制限され、自宅でのテレワークの機会が増大したが、自宅での研究環境の整備が追いつかず、現地調査が不可能であることを減殺するべく、インターネット上で文献資料を渉猟したが、その資料の大量の印刷は、限られた出勤日においてなされなければならなかった。研究活動におけるペーパーレス化の必要性については、日頃から認識してはいるものの、とりわけ私のような高齢研究者にとって過重であった。またズーム会議等への参加も、当初は、まったくやり方がわからず、戸惑うことが多かった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス蔓延により、本研究課題での海外での現地調査を1度も行うことができなかった。今年度は、可能であれば少し長めの海外現地調査を行うことで、遅れを取り戻したいと考えている。また、現地調査が不可能であることが予想される場合、速やかに、ズーム会議などにより現地の研究者や行政関係者、農業生産者からの聞き取り調査を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延のため、1度として海外での現地調査ができなかったことによる。
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