研究課題/領域番号 |
19K06267
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研究機関 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
研究代表者 |
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70356327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リアリティのテスト / フランス / 質素倹約社会 / 食料主権 / コロナ禍 / ウクライナ戦争 / 脱炭素 |
研究実績の概要 |
日本のみならず、EUの農業・食品部門は現在、コロナ禍からの経済復興、ウクライナ戦争、高インフレなどの、これまでに類を見ないような新しい現実(リアリティ)に直面している。ウクライナ戦争が明らかにしたのはEUのロシア、ベラルーシへの石油および天然ガス、肥料の依存であり、こうした地政学的リアリティと並んで、金融危機以降、2008年からの消費者の購買力の低迷といった市場のリアリティにも直面している。気候変動など、環境的リアリティへの対応は喫緊の課題である。本研究は、こうした三つのリアリティに直面して進んでいる「質素倹約」社会への移行において農業・食料システムが占める役割を検討するために、フランスの現状を整理した。脱炭素的で社会包摂的なフードシステムの構築に向かうための課題を同定しようとした。 マクロン政権は2019年ビアリッツでのG7で食料主権を唱導し、南米からの植物タンパク質の輸入を制限するよう、訴えた。政権による食料主権の強調とは裏腹に、国産の高い農産物・食品よりも安価な輸入品に頼る消費者が多ければ、食料主権は画餅に帰する。ところが1990年にフランスは世界の農産物・食品の輸出市場のシェアの11%を誇り、米国に次いで二位の地位にあったが、今や六位に落ちている。 このように、コロナ禍とウクライナ戦争はリアリティを根本的に変容させてしまった。こうした新しいリアリティに直面して、農業と食料システムはどのような移行を迫られているのであろうか。フランスを事例に考察を行った。国連SDGs、EUの「農場から食卓へ」戦略は脱炭素的な規格化を通じて持続可能な農業食料システムへの移行を準備したはずであった。こうした動向はウクライナ戦争の勃発以降、地政学的な見直しを迫られているのであろうか、さらに深い観察が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍での海外渡航制限が緩和されつつあったが、ウクライナ戦争勃発により、渡航費用が大幅に増加したため、他の費用の支出計画などを考慮して、渡航を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、海外出張を計画しているが、渡航費用がより安価になることが条件である。論文執筆や英語論文執筆を優先させることも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍でフランス出張が制限されていたこと、渡航制限が緩和されたものの、ウクライナ戦争勃発により海外渡航費用が高騰したため、海外出張を断念したため。
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