本研究は、小売・外食企業が主導する青果物流通再編について、加工業務用青果物を中心に据えつつ、実証分析を行った。 加工業務用青果物流通については、遠隔青果物大産地北海道の出荷団体(ホクレン)による産地ファースト戦略を取り上げ、産地の生産力の維持向上を第一の目標とし、積極的に加工業務用需要を取り込んだ販売戦略を展開していることを明らかにした。また、北海道旭川近郊で有機農業を基軸とした6次産業化を実践する農業法人を分析し、1次部門で有機農業を進め、その原料の魅力を加味したジュース加工など2次部門、さらには農産物直売所を複数箇所展開し、3次部門も内部化している。同農園では、これらの3部門を有機的に結合させつつ、2次部門ではOEMの受け入れ、3次部門でも周辺農家の農産物も受け入れて販売するなど、各部門独自の対応を取ることによって全体としての6次化を安定的に維持できていることを明らかにした。 この他、北海道における主要小売企業の青果物調達戦略を分析し、地産地消対応として直売コーナーを拡充、簡便化対応として焼き芋などの店頭販売に注力しつつ、卸売市場仕入れについては各地区ごとに地場卸売市場を利用する分権的な調達システムを採用していることを明らかにした。また、ハノイ(ベトナム)のスーパーによる安全野菜の調達戦略を分析している。さらに、ECにおける農産物・食品の流通についても分析し、BtoC(小売)ECでの農産物・食品の取り込みは遅れており、またその流通システムは多数の流通事業者の介在する多段階なものであることを明らかにした。
|