今年度は、枝番集落営農が広範に広がっている東北・九州地域を対象に改めて現地実態調査を実施し、①近年、非法人の枝番集落営農を中心に解散する事例が一定程度存在していたが、その多くは実質的に個別営農を存続していた農家の集合体であり、設立以降、組織内において構成員の分化が進行していたとはいえ、組織解散後も地域農業の姿に大きな変化が生じなかったケースが少なくなかった、②集落営農を実質的に牽引していた構成員のリタイヤにより、解散に至ったケースもいくつか存在したが、そうした場合においても、周りに存在する農家や他の集落営農により農地の耕作が維持されており、地域農業において大きな問題は生じていなかった、等を把握できた。 昨年度までの研究において、設立後の枝番集落営農においては、組織再編の有無にかかわらず、時間の経過とともに集落営農から構成員が離農や脱退を通じて減少している実態を指摘してきたが、そうした動きをふまえると、協業実体のある形態へ発展すべき存在として指摘されてきた枝番集落営農が、設立後かなりの時間が経過した今日においても、その多くは全面的協業化に向かって進んでいない状況にあると考えられる。その一方、枝番集落営農構成員の高齢化や脱退が進行し、解散に至る場合でも、地域農業がギリギリの状態で持続されており、構成員個々の営農が持続・発展しているケースにおいては、問題は表面化していなかった。 とはいえ、今後、存続が困難となる枝番集落営農が急増することが危惧され、そうした事態をカバーしていく担い手をいかに確保・育成していくかが喫緊の課題である。それと同時に、地域(集落)内農地を漏らさずに維持・管理していくという集落営農の考え方・枠組みのもとで、組織構成員がそれぞれの実情に応じて営農を継続できる方法を今後とも模索していくことが求められよう。
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