開発途上国の乾燥地において、灌漑農業を実現するために、現地で調達可能な資材を用いて節水型、かつ、低コストで灌漑効果の高い地中灌漑方法を開発を目指し、ヒモの毛管現象を利用したヒモ灌漑システムを提案し,効果検証を行った。 これまで水の供給能力が高い材質と判断された綿およびナイロン(直径3mmおよび6mm)について、乾燥状態からの推定供給可能量、平均供給量を整理した。推定供給可能量は給水開始後から5日間の回帰直線の傾きと定義し、土壌を珪砂、水頭差を5㎝、ヒモを垂直設置とした場合、ナイロン3mmで250.9cm3/dと最も高く、綿6mmで91.6cm3/d、綿3mmで69.5cm3/dとなった。平均供給量は、ナイロン3mmで104.5cm3/d、綿6mmで33.7cm3/d、綿3mmで25.9cm3/dとなった。 畝立て圃場における大豆の栽培実験を行い、各実験条件、作物の生育ステージ毎における負圧差による水分給水量、土壌水分変化を明らかにした。一方で、送水チューブに空気が溜まることと施肥方法が課題であったが、気泡への対策としてパイプ直径の増大とヒモ接続部の空気穴が有効であり、また、液肥による施肥が可能であることを示した。また、有機物を多く含み間隙率が大きいもみ殻を含んだような土壌では給水能力が低下することが明らかになった。 土壌水分分布シミュレーションの変数決定のために、灌漑システムをつないだ小型アクリル容器(30cm×30cm×30cm)に砂質土(珪砂7号)を充填し、小型テンシオメータにより土壌水分変化を測定した。得られた値からヒモの透水係数、フィッティングパラメータ等を逆解析により決定し、2次元の土壌水分分布シミュレーションモデルを構築した。
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