研究課題/領域番号 |
19K06286
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
武藤 由子 岩手大学, 農学部, 准教授 (30422512)
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研究分担者 |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10335151)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒素動態 / 水分移動 / 嫌気・好気状態 / 土壌微生物 |
研究実績の概要 |
土壌中における窒素炭素動態の理解は,農業の持続的展開や気候変動への適応といった課題解決のために重要である.しかし,窒素動態と土壌微生物活動を関連付けた研究は極めて遅れている.本研究の目的は,嫌気・好気状態の異なる土壌試料を用いて一次元カラム実験を行い,[1]嫌気・好気混在系において,水分移動過程(蒸発)が硝化に与える影響を調べること.次に,[2]その結果を硝化の速度定数の水分移動依存性を考慮した数値モデルで再現すること.さらに,[3]硝化の速度定数に影響する複数の因子(土壌水分量・Eh等)をATP量に統合することの3点である.以上の結果から,土壌中の窒素動態について考える上で,水分移動-土壌環境の不均一性-溶質移動-土壌微生物活動を関連付けることを目指している. 2020年度は室内実験において,岩手大学の休耕畑の表層から採取した黒ボク土を用いた蒸発速度の異なる硝化の一次元カラム蒸発実験を行った.蒸発により試料の体積含水率が0.4から0.2まで減少する過程において,室温25℃でのNH4+-H量・NO3--N量・ATP量・Eh分布の変化を観測した.蒸発速度は0.07,0.12,0.21(cm/day)の3条件で,実験期間はそれぞれ20,14,7日とした.実験により得られた硝化によるNH4+-H量の減少とNO3--N量の増加を,硝化の反応速度定数を体積含水率の関数として与えて再現した.実験の結果,試料のEhは実験開始前の前培養によって約300mVまで低下していたが,蒸発開始後に増加し,その分布の変化は蒸発速度によって異なった.また,蒸発速度によるEh分布の変化の違いが,体積含水率と反応速度定数の関係に影響した.ATP量と反応速度定数の関係は,Ehが400mVよりも大きい場合にバッチ試験の結果と等しくなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要に記載の通り,計画した実験・現場観測を全て行い目的を達成することができた.ただし,試料の好気・嫌気状態の制御について改良が必要なため「概ね順調に進展」との評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
計画では,2021年度にはこれまでの結果から新たに検討が必要と考えられた問題に焦点を当てた実験を行うこととしていた.これまでの実験で,蒸発速度によるEh分布の変化の違いが体積含水率と硝化の反応速度定数の関係に影響したことが示された.このEhの影響をより詳細に考察するためには,実験開始時のEh低下が影響しない条件での実験が必要と考えられた.そこで,前培養の方法を工夫した蒸発実験を追加して行うこととする.
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