研究課題/領域番号 |
19K06288
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石井 敦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90222926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 灌漑排水 / 水収支 / 水田 / 開発途上国 / 水利組織 / PIM |
研究実績の概要 |
研究協力者の佐藤政良氏(筑波大学名誉教授)、Paul Ayella氏(筑波大学生命環境科学研究科博士課程1年)とともに、2019年7月19日~8月2日にウガンダ国に調査出張し、研究対象地区である大規模灌漑地区(Doho地区、Lwaoba地区)の現地調査を行った。調査の結果、Doho地区の水利組織の配水が不平等で、特に用水不足エリアで農民の水利費支払いの拒否を引き起こしている実態が明らかになった。また、用水不足の実態から、水田灌漑用水の反復利用が重要であることがわかり、現地での水田排水の流出についての定量的調査の必要性が明らかになった。さらに、Kyoga湖周辺の低湿地の大規模水田開発地区を調査し、今開発候補地のほとんどはKyoga湖周辺の湿地swampであり、これまで開発されている水田はいずれも谷地田で、その灌漑・排水の改良がウガンダ国における農業生産性向上のためには、重要な課題であることが明らかになった。 以上を受けて、研究計画を前倒しに変更し、2019年2月より現地にPaul Ayella氏を派遣し、大規模灌漑地区(Kibimba地区)において地下水浸透を実測するための流量計を設置した。また、大規模谷地田地域を対象に、上流・中流・下流の用水状況の聞き取り・アンケート調査(8集落、聞き取り対象農家10名ずつ)を行い、流域面積と水文環境、営農の関係について求め、灌漑排水の課題の抽出を行った。この成果は2020年8月の農業農村工学会大会講演会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた大規模水田灌漑地区の水管理実態と、配水の不平等性については、現地で確認ができた。水利費支払いのデータを入手しており、これをもとに配水の不平等性の評価を行っており、現在分析を進めている。今後、水田1枚レベルの用水使用状況について、現地で水位計を設置して、その実態を定量的に検証することを計画している。このテーマに関しては、ほぼ予定通りに研究が進捗している。 これに加え、現地調査の結果、ウガンダ国の今後の水田開発適地として広大な谷地田群があることがわかり、新たな研究課題として、この地域の水田の水利特性と営農、今後の農業土木工学的な改善点についての調査を行った。すでに現地でのアンケート調査を2020年3月に実施しており、データを得ており、2020年8月の農業農村工学会大会講演会の講演要旨を作成、投稿を完了した。 さらに、現地調査の結果、今後ウガンダ国においては水田灌漑用水の反復利用が必須となることがわかり、これを行うための灌漑用水の浸透についての基礎的分析の重要性が明らかになった。そのため、新たに大規模水田灌漑地区において流量計を10か所設置し、浸透流についての分析を開始した。以上より、当初の計画よりも現状は進捗しているものといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Doho地区とLwoba地区の用水配分については、水利費徴収率を地図上におとし、空間分布の分析を行う。また、次年度中に水田に水位計を設置し、水田一筆単位の用水量の変化をもとめ、用水配分の実証データを取得する。 水田灌漑用水の浸透流分析については、大規模灌漑地区(Kibimba)に流量計を設置しており、連続的にデータを取得中である。今年度にPaul Ayella氏を再度現地に派遣し、現地観測データの回収と、令和3年度に向けての機器の再設置を行う。 谷地田の水利条件および営農については、すでに得られたアンケートデータを分析するほか、google earthを利用して流域面積から上流・中流・下流水田地帯の利用可能用水量のシミュレーションを行い、それとアンケート結果とを対比させて分析を行う。この成果は国際水田水環境学会に論文として投稿する予定である。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響で、現在ウガンダ国派遣中の研究協力者Paul Ayella氏が日本に戻れない状況になっている。そのため、予定を変更し、現地での統計データ等の収集を4月以降も行っている。研究の進捗は問題がないが、予算が逼迫しつつあり、問題化している。今後、本科研費に加え、大学の運営費交付金なども使用して、予算の確保に努める。
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