最終年度は、前年度までの現地調査等で得られたデータをもとに、大規模水田灌漑地区のDoho地区(灌漑面積約1000ha)の11の灌漑ブロックについて、配分される灌漑用水の平等性を評価した。これにより、Doho地区は2000年代から毎年、番水方法を変更して平等配水に近づいていること、その変更プロセスは、農民水利組織による配水計画の決定と、それに基づく政府機関による配水施設の操作という方式によって可能になっていることが明らかになった。また、Doho地区の2019年の水利費支払いのデータと地区内水田の耕作者リストより、水利費が支払われた農地の分布状況を分析した。その結果、ブロック間、ブロック内の支線水路間、支線水路ごとの上流部と下流部といったあらゆる水路レベルにおいて、下流部の水利費徴収率が低いことが明らかになった。 研究期間全体を通じて、以下が明らかになった。 1)受益農民の民主的水利組織と政府機関が共同管理するDoho地区と、大規模地主が独裁的に灌漑管理を行うLwoba地区との比較分析を行い、Lwoba地区の方が収量が高く、用水配分に対する農民の満足度も高いことが明らかになった。共同管理地区では、幹線用水から灌漑ブロックからの配水計画は順守されているが、灌漑ブロック内の配水についてはモニタリングが不十分であることが示唆された。 2)Doho地区の水利費徴収率の分析により、すべてのレベルの用水路で下流部の水利費徴収率が低いことが明らかになった。不十分な用水配分状況が、水利費の徴収率に大きく影響することが示唆された。 3)Doho地区で灌漑ブロック間の平等配水が実現している要因として、日本と同様、受益農民からの要望を受けて水利組織が変更を決定する仕組みが機能していること、その際、現地の政府職員による監視・指導が重要であることが明らかになった。
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