農地では大規模化や近代的な農業形態が導入されたため,土壌侵食や土壌に含まれる栄養塩の流亡が顕著になっており,地力の低下や流出した土砂や栄養塩による水域の自然環境劣化に大きく関与している。そこで本研究課題では,水土保全や地力向上に資するため,沈砂池の堆積土の農地還元をはじめとした土壌改良に伴う侵食抑制対策効果の定量化と評価・予測方法の確立を目的として研究を遂行した。 最終年度(2021年度)では,日本国内の特殊土壌であるシラス及びマサ土を供試土に加えて土壌の受食性の系統的評価を行った。その結果,暫定的ではあるが日本国内の土壌に対応した土壌の受食係数の推定式を構築することができた。また,沖縄県石垣市の試験圃場において,沈砂池堆積土の混和による土壌改良に伴う受食性の低減効果の実証試験を行った。その結果,野外における試験においても,侵食削減効果が得られることが分かった。さらに,室内侵食試験や野外侵食試験等で得られた結果と土壌侵食解析モデル(WEPP,Water Erosion Prediction Project)を用いて,土壌改良による対策効果の評価・予測手法の開発を行った。その結果,沈砂池堆積土の混和条件や作物の栽培条件によって侵食抑制効果が異なることを評価することができた。 上記とこれまでの研究成果と合わせて,土壌侵食が問題となる主要土壌および地域を対象として,室内実験によって土壌改良に伴う受食性を定量的に同定し,プロセスベースモデルであるWEPPによる侵食解析を実施し,野外試験の結果とともに,土壌改良による侵食抑制効果について評価することができた。
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