研究課題/領域番号 |
19K06294
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
九鬼 康彰 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60303872)
|
研究分担者 |
内川 義行 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20324238)
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
中島 正裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80436675)
新田 将之 東洋大学, 理工学部, 助教 (00843781)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 集落計画 / 親水空間整備 / 維持管理 / 内容分析 / 小規模集落 / 関係人口 / 継承 |
研究実績の概要 |
中島は滋賀県甲良町内9ヶ所の親水空間整備を対象に,約30年後の現在の利用状況把握と機能診断を行い,当初の整備計画や住民意識調査の結果と照合し,その対応関係について考察した。その結果,施設整備の充実した地区では計画段階での住民参加が活発であったこと,利用を重視して整備を実施した地区では現在もそれを継承しようとする意向が強いこと,一方でその実現には維持管理の担い手確保が課題となること,が明らかになった。 また新田は,住民参画型の地域づくりの先進事例である滋賀県甲良町の集落計画を取り上げ,同一地区での二時点(1998年と2007年)の計画書を比較することでそれぞれの特徴と内容変化を把握し,その理由を考察した。その結果一次ではハード事業に関連した課題や施策が目立ったのに対し,二次では少子高齢化や維持管理に関する課題が出現し,10年間の社会変化と事業の重点の変化が反映されていたこと,二次はより総合的な計画の特徴を示したが,これは計画が条例制定後に作成されたため計画や計画主体の位置づけが明確化したことの影響と考えられた。 一方内川は長野県原村を対象に,別荘地の定住・非定住者の実態と景観計画づくりへの参加可能性を検討した。別荘開発業者は別荘住民の計画参加に消極的な一方,別荘地住民は景観への関心も高く,約半数は地元自治会に加入していた。これらから自治会活動を通じた計画参加の可能性が示唆された。 また長野県根羽村高橋地区を対象に小規模・高齢化集落の持続のあり方を地区内の山地酪農放牧地を訪問する関係人口との地区協働活動の実態から検討した。地区では移住・関係人口抜きでは人口の維持が困難な中,地域の文化的資産等の維持協働活動を通じ,関係人口の人々にメタフィジカルな意味での集落持続・継承に関する思いが通じ,住民の安心が与えられる点が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は各事例対象地において,計画の評価・更新といった局面について詳細なインタビューを複数回実施する予定であった。しかし2020年2月以降新型コロナウイルスの感染拡大による2回の緊急事態宣言の発出等,年間を通して人の移動が制限される状況となった。また研究組織のメンバーが所属する機関により調査出張への対応も硬軟差が生じ,特に首都圏のメンバーは対象地から訪問の抑制を要望されるケースもあり,現地調査を主体とする本研究の遂行は直接的な影響を被った。 研究組織内での情報共有や事例検討はオンライン対応によって何とか進めることができているが,実質的な調査の進捗が思わしくないことが上記判断の理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
事例調査の遂行が2021年度も困難と予想されるため,引き続き現地調査の可能性を探りつつも他の面からのアプローチも進めることとする。 具体的には計画論研究の先達へのリモートインタビューを行って研究フレームの改善を図り,計画実践経験の豊富なコンサルタントへのインタビュー(リモート含む)によってマネジメントサイクルにおける法則性の抽出を試みる。また事例蓄積を促進するために既往研究にもあたり,各事例地の現状把握や公的機関が保存する関連資料の収集を行い,現地調査抜きでも導き出せる知見を研究メンバー間でのオンライン会議によって検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事例調査地でのヒアリングに要する旅費を中心に予算を組んでいたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて現地への訪問が不可能になったことが主な理由である。ヒアリングの対象は住民だけでなく行政担当者も含んでおり,電話等での調査実施も一部では試みたものの,研究内容の特性上現場での確認や保存資料の入手が不可欠であり,調査対象の理解・協力が得られない状況での強行は不適切と判断した。 次年度内でのワクチン接種は期待できず,PCR検査や抗原検査等も任意の自主対応とされている中で訪問調査に対する許可を得られる見込みは当面薄いと考えられる。したがって研究期間の延長も視野に入れて事例調査地とのコンタクトを継続すると同時に,計画のマネジメントサイクルに関する海外文献を積極的に渉猟し,研究組織内で検討・考察する予定である。
|