研究課題/領域番号 |
19K06294
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
九鬼 康彰 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (60303872)
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研究分担者 |
内川 義行 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20324238)
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
中島 正裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80436675)
新田 将之 東洋大学, 理工学部, 助教 (00843781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計画書 / テキストマイニング / マネジメントサイクル / アンケート / 農泊 / 新型コロナウィルス / 甲良町 |
研究実績の概要 |
九鬼は集落が主体となって農泊事業を運営するケースでの計画サイクルの実態把握を目的に,全国547の地域協議会を対象とするアンケート調査を行った.調査の結果(n=107),集落が関与するとみられる地域協議会は全体の約2割程度だった.また約2割の協議会がコロナ禍の影響により協力者の減少や宿泊事業の中断を経験していた.さらに2017年以降に事業を開始した協議会では,民泊以外の方法で宿泊施設を確保する傾向が見られた. 次に新田は滋賀県甲良町における水環境整備を発端とする集落単位の地域づくりを事例に,3次にわたって計画を策定した地区の計画書のテキストマイニングを行った.その結果,各次の頻出語の順位から計画の内容がハード重視からソフト重視へ変化したことが解明できた.また1次と2次,2次と3次の計画書相互の関連性が高かったことから,継続的に計画策定を行う際には前期の内容が引き継がれる傾向にあることが確認できた.さらに計画書で取り上げられた課題とその施策の関係に着目すると,施策対応のない課題が存在したことから住民主導型の計画であっても外部サポートの必要が示唆された.さらに中島は,同じく甲良町の2集落を対象に全世帯アンケート調査やヒアリング調査等の結果を踏まえ各集落の持続性に関わる問題構造を整理し,集落行事の継承に向けた4つのシナリオを提示した.いずれのシナリオにも空間的かつ時間的に開かれた農村協働力が必要であり,その前提として世代交代ではなく世代融合のための「場」の必要性を実証的に明らかにした. 最後に内川は長野県内の3市で,集落住民の生活環境の充実を目指した市民農園整備の事例調査を実施した.3農園は利用者が園内の維持管理も行うもの,JAの店舗に隣接して苗や種子・用具類等が手軽に入手できるもの,芝生キャンプスペースを併設させコロナ禍で需要が伸びているもの等,多様な形態が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は各事例対象地において,計画の評価・更新といった局面に関する詳細なインタビューを複数回実施する予定であった。しかし,令和2年度に引き続いて新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言の発出等,年間の多くが人の移動が制限される状況となった。また研究組織のメンバーの所属機関が定める調査出張への規制が全体的に引き上げられたことも加わり,現地調査を主体とする本研究の遂行は3年目も直接的な被害を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
現在は第7波の兆候が指摘されるなど,昨年と同様の流行が予想される一方でワクチン接種の進展もあり,2022年度の状況を予想することが非常に困難であるが,すでにコロナ禍は3年目に入ることから調査対象とする現地でもそれなりの対応が進んでいることを見通し,基本的にはこれまで実施できなかった現地調査の実施を第一に考え,その準備を進める。また最終年度にあたることから,研究組織内でのディスカッションの機会を増やし,それぞれが得た知見のブラッシュアップを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
事例調査地でのヒアリングに要する旅費を中心に予算を組んでいたが,令和3年度も新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて現地への訪問が不可能になったことが主な理由である。ヒアリングの対象は住民だけでなく行政担当者も含んでおり,電話等での調査実施も一部では試みたものの,研究内容の特性上現場での確認や保存資料の入手が不可欠であり,調査対象の理解・協力が得られない状況での調査実施は不適切と判断した。 これまでに複数回のワクチン接種が進行してきたものの,変異株の出現および流行によって訪問調査に対する許可が得られる見込みは,特に訪問履歴のない対象地では低いと考えられる。そこで事例調査地とのやり取りをスムーズに行うためのオンライン会議対応機器の充実を図り,また研究組織内でのディスカッション機会の確保を重視した使用計画に修正し,次年度の研究活動を行う予定である。
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