研究課題/領域番号 |
19K06296
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
神宮字 寛 福島大学, 食農学類, 教授 (10299779)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アキアカネ / 冬期湛水水田 / 越冬卵 / 気候変動 / 温暖化 |
研究実績の概要 |
水田生態系を代表する赤とんぼ(アキアカネ)が減少している。都道府県が編纂する最新のレッドリストは、12の都道府県でアキアカネを絶滅危惧種に指定した。近年、水鳥の保全を目的に冬季湛水水田が全国に拡大している。しかし、卵越冬種であるアキアカネへの冬季湛水管理の保全効果が疑問視されるようになった。乾田に適当したアキアカネ卵にとって、水田の冬期湛水化はどのような影響を与えるのかを明らかにすることは、環境保全型農業を進めるうえで意義がある。そこで、地球温暖化による冬季の水温上昇はアキアカネ越冬卵の孵化に影響するか?という問いに答えるための実験を行った。 温暖化シナリオによる気温上昇に応じた越冬卵の孵化の状態を調べることを目的に、アキアカネ越冬卵を15度、20度、25度、30度の4条件下に置いて胚の発育ステージを調べた。アキアカネ卵は、福島大学水田で採取した卵を用いた。アキアカネ卵は20度で最も発育速度が速く、胚斑点が完了した。一方、30度は4条件下で最も胚の発育速度が遅かった。 15度、20度では、60日間の実験期間中に孵化が確認できなかった。一方で30度はふ化率が高く、ほぼすべての卵が孵化した。これは、高温条件では胚の発育が抑制されるが、ある閾値を超えると卵が一斉に付加することを示している。予期せぬ高温に越冬卵が暴露した場合、胚発育を遅らせる戦略を持っているが、冬季の高温+浸水という条件が一定期間継続すると、冬季に卵が孵化するというリスクがあることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により2か年にわたって鹿児島県のアキアカネ卵の採集ができていない。また、実験環境が整っていない。アキアカネが絶滅危惧種となっている鹿児島県のアキアカネ卵を用いた実験は必須であり、何とか実行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の状況によるが、鹿児島県のアキアカネ卵を材料とした実験を進める。今年の秋季には、鹿児島県でのアキアカネ卵の採集を実行し、実験を行いたい。既に宮城県産の卵を用いた実験は完了しており、論文として公表している。研究手法は確立しているので、実験材料の確保に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、鹿児島県でのアキアカネ卵の採集ができなかった。この作業に係る旅費や実験準備にかかる経費の支出が生じなかった。今年度は、鹿児島県での実験材料の確保や実験を行うための予算執行計画を立てている。
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