研究課題/領域番号 |
19K06309
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
柏嵜 勝 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (00282385)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イチゴ / 海外味覚審査 / 呈味成分分析 / 品質評価 / 味覚評価推定モデル / ニホンナシ / 可視・近赤外分光分析 / 呈味成分予測モデル |
研究実績の概要 |
課題1:農産物(イチゴ2品種3種類)を国際的な味覚の第三者評価機関(国際味覚審査機構:ベルギー)に出品し味覚評価データを取得、現地にて品質把握および凍結搾汁液を日本に輸送、海外輸送前後の呈味成分(糖組成:フルクトース,グルコース,スクロース,有機酸組成:クエン酸,リンゴ酸)の変化を把握した(輸送時損傷防止のためイチゴ用個別包装容器を使用)。味覚評価スコアは、First Impression:92~95、Vision:91,98、Olfaction:82~86、Taste:82,88、Texture:83~94、Total Score:88.8~91の評価データを得た。評価傾向としては、Tasteは甘味と酸味が濃いもの、Textureは果肉が柔らかいもの、Visionは逆三角形で鮮やかな赤色のものの評価が高い。 さらに、現地販売のイチゴ(5種類)を購入し、同様に凍結搾汁液を日本に輸送し呈味成分を把握した。日本産イチゴは輸送前後で、糖組成は各成分とも僅かに減少するが、比較的スクロースの減少が大きかった。有機酸組成はほぼ変化が無かった。呈味成分を比較すると現地購入イチゴはスクロース含有量が非常に少ないが、糖度はほとんど差が無いこと、有機酸含量が多く、特にリンゴ酸含量が2倍以上多いことが特徴的であった。 課題2:インタラクタンス法を用いてニホンナシ(品種:にっこり)の果実表面から近紫外・可視・近赤外分光スペクトルを測定するとともに、測定した部分の果肉を切り出し、糖度、呈味成分組成を分析した。分光スペクトルと呈味成分分析値をデータセットとして蓄積し、部分的最小二乗回帰解析を行って呈味成分のPLS推定モデルを作成し評価を行った。 課題3:イチゴおよびナシのデータセットの解析およびモデル作成を2月から始める予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大に伴う研究活動自粛のため実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年5月に海外第三者機関による食味審査データの取得および海外輸送時の品質評価試験を計画通り実施し、凍結搾汁液の日本への返送、呈味成分分析をほぼ順調に遂行してきた。9月よりニホンナシ(品種:かおり,にっこり)について、外観情報(可視スペクトルを含む)、インタラクタンス法による近紫外・可視・近赤外域スペクトルデータの取得、呈味成分分析、冷蔵貯蔵による呈味成分および芳香成分の変化把握に取り組み、12月までに分析データの蓄積ができ、その後統計的手法を含む解析を行ってきた。 12月からイチゴシーズンとなり、生育状況の把握とイチゴ果実用の非接触表面反射スペクトル測定部の設計を始めた。しかし、2020年1月以降のイチゴの収穫シーズンに新型コロナウィルス感染症が拡大し、2月中旬以降これに伴う大学研究棟内立ち入り規制などを受け、研究計画に影響が生じ始めた。 3月中旬に味覚審査に申請したが、その後ベルギーを含むEU圏への渡航注意喚起、4月以降渡航禁止となり、またEU向け物流もほぼ絶望的となり、2020年度の海外第三者機関による味覚審査データの取得および海外輸送による品質評価試験の実施を断念した。 4月より現在まで大学研究棟への入構制限、研究室および実験室への立ち入り制限のため呈味成分分析装置の継続的な稼働ができない状態にある。6月に入り徐々に制限が緩和されつつあるが、イチゴ収穫シーズンの後半に予定していた研究計画はほぼ実施できない状態に陥っている。研究成果発表予定の学会等も中止となっている。 2020年度味覚審査および品質評価データの獲得が不可能になったため、過去に同様な味覚審査および品質評価試験を行った実績の確認作業を行い、数回分のデータを保有しているが審査項目の変更や品質評価方法が異なっているなどの差異を把握した。今後、本研究目的の達成にこれらのデータが使用可能であるかを早急に判断する。
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今後の研究の推進方策 |
課題1:2020年1月以降新型コロナウィルス感染症拡大に伴う研究活動自粛、3月以降入構制限などの対策のため、呈味成分分析やその解析等が実施できない状況であった。また、味覚審査機関があるベルギーを含むEU地域への渡航自粛の通達があり、また審査機関から5月第3週の週末から3週連続で週末のみで審査を実施する旨の連絡があった。文科省からのEU域への渡航禁止通達のため、審査出品とともに現地で実施する品質評価試験が不可能となったため、2020年度味覚審査データの取得を取り止めた。 2020年度味覚審査および品質評価データの獲得が不可能になったため、過去に同様な味覚審査および品質評価試験を行った実績の確認作業を行い、数回分のデータを保有しているが審査項目の変更や異なる品質評価方法での実施であることなどの差異を把握した。今後、本研究目的の達成にこれらのデータが使用可能であるかを早急に判断し、使用可能とする方法などの検討を早急に進めている。 課題2:5月中旬から研究棟への入構が最小限で認められたが、既にイチゴのシーズンは終了してしまっているため、6月以降収穫シーズンとなる夏イチゴおよび9月以降のニホンナシについて呈味成分非破壊推定方法を検討する。さらに、AI技術を活用したスペクトル解析方法について、当初はTensorFlowのみを検討対象技術としていたが、この分野の技術開発は日進月歩であるため、文献等の情報収集を進め、より良い技術の探索も進める。 課題3:イチゴ果実の味覚評価データ、分光分析データ、呈味成分データを基盤に、多感覚器分析システムによる味覚・視覚・嗅覚の評価データを加え、非破壊味覚推定方法の開発を進める。なお、味覚・視覚・嗅覚に加え触覚(食感)がおいしさを判断する要因と仮定するが、その評価基盤は個人の感覚に根付いている。このため、個人の感覚の差について取扱い方法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額であるため、2019年度内は何とかほぼ研究計画の通りの予算執行ができたと考えている。なお、残額は次年度の消耗品費に充てる予定である。
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