研究課題/領域番号 |
19K06314
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
橋本 篤 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40242937)
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研究分担者 |
末原 憲一郎 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (70291614)
亀岡 孝治 三重大学, 生物資源学研究科, 名誉教授 (90177600) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルコール飲料 / ワイン / 赤外分光法 / 色彩情報 / 品質評価 / スペクトル解析 |
研究実績の概要 |
本研究はソムリエの感性を模倣したオプティカル・テイスティング(Optical Tasting)の概念を提唱することを目的としている。 「味わいを確認する」ためのワイン成分の赤外分光情報解析においては,研究1年目に構築済のATR(Attenuate Total Reflection)法により取得した各種ワイン(液相)の赤外吸収スペクトルパターンを解析し,ワインを特徴付ける赤外吸収波数帯の抽出を行った。そして,抽出した波数における赤外分光情報に基づいて主成分分析を行ったところ,ワインの識別を精度よく行えることが実験的に示された。一方,「香りを感じる」ためのワインの香気成分の赤外分光情報解析においては,1年目に構築したグラスを動かさないように鼻に近づけたときの第一香,グラス中のワインを回したときの第二香,一通りのテイスティングが終わった後の第三香の計測が可能な香気成分の赤外分光計測システムを用い,エタノール濃度および温度をパラメータとしたエタノール水溶液の蒸散成分スペクトルを経時変化的に取得した。それらスペクトルを解析することにより,任意のエタノール濃度および温度におけるエタノール蒸気の赤外吸収スペクトルならびにその時間変化挙動の予測が可能となった。また,同じエタノール濃度であってもエタノール水溶液とワイン等の多成分系溶液とではエタノールの蒸散挙動に差異が生じることがわかった。さらに,「外観をみる」ためのワインの色彩情報解析においては,従来から用いられているワインの色評価指標である420 nmと520 nmにおける吸光度比よりも可視吸収スペクトルパターンを用いた方がワインの特徴付けに適していることが実験的に示唆された。 以上のように,研究2年目の2020年度においては,最終年となる3年目の研究を遂行するための重要な知見が得られたもの多感が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「味わいを確認する」ためのワイン成分の赤外分光情報解析においては,研究1年目に構築済のATR(Attenuate Total Reflection)法により取得した原料や産地,エタノール濃度などが異なるワイン(液相)の赤外吸収スペクトル情報に基づいて主成分分析を行うことにより,精度よくワインを識別することができた。このことは,ワインの液相の赤外吸収スペクトル解析手法が「味わいを確認する」ために有効であることを示唆している。 「香りを感じる」ためのワインの香気成分の赤外分光情報解析においては,1年目に構築したグラスを動かさないように鼻に近づけたときの第一香,グラス中のワインを回したときの第二香,一通りのテイスティングが終わった後の第三香の計測が可能な香気成分の赤外分光計測システムを用いて取得したタノール水溶液の蒸散成分スペクトルの経時変化を解析することにより,任意のエタノール濃度および温度におけるエタノール蒸気の赤外吸収スペクトルならびにその時間変化挙動の予測,ならびにエタノール水溶液とワインのエタノール蒸散挙動の際の把握を可能とした。これらの研究成果は,本研究で構築したエタノール蒸散成分の赤外吸収スペクトル計測手法がワインの「香りを感じる」ための情報種時に適していることを実験的に示したものと考えられる 「外観をみる」ためのワインの色彩情報解析においては,従来から用いられているワインの色評価指標である420 nmと520 nmにおける吸光度比よりも可視吸収スペクトルパターン解析の方がワインテイスティングに親和性の強い情報であることは,本件吸水口のために意味深い結果である。 以上のように,研究2年目の2020年度においては予定通り研究が遂行され,最終年度にあたる3年目の研究推進に重要な研究成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はソムリエの感性を模倣したオプティカル・テイスティング(Optical Tasting)の概念を提唱することを目的としている。研究2年目の2020年度においては,2019年度の研究成果を基礎として分光情報に基づいたワインテイスティングに必要な液体および蒸散西部通の赤外吸収スペクトル情報と可視吸収スペクトル情報に関するデータ取得,ならびにその解析手法の基盤が構築されたものと考えられる。最終年となる研究3年目の2021年度は,研究の最終目的である分光情報に基づいたワインテイスティングに必要なデータ取得をおこなう。 「味わいを確認する」ためのワイン成分の赤外分光情報解析においては,ワインの品種間における差異の把握をより高精度なものとする。また,「香りを感じる」ためのワインの香気成分の赤外分光情報解析においては,エタノール水溶液,ワインモデル,ワインの蒸散成分スペクトルの動的挙動に及ぼす成分,温度などの影響を定量的に解析する。さらに,「外観をみる」ためのワインの色彩情報解析においては,上記の2種類の赤外分光情報との情報結合方法について検討する。その上で,分光情報に基づいたソムリエの感性を模倣したオプティカル・テイスティング解析手法を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 新型コロナ感染症の感染拡大の影響を受け,2020年度当初において実験を行うことができない期間が生じたこと,また国内外で開催予定であった学会が中止になったため,消耗品費および旅費の使用が予定よりも少額となった。 使用計画: 2020年度に取得できなかった実験を行うとともに,2020年度に計画した研究成果の学会発表を予定している。
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