研究課題/領域番号 |
19K06321
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
長島 啓子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40582987)
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研究分担者 |
杜 偉薇 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (00512790)
神代 圭輔 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00548448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木口の断面画像 / 特徴量 / 年輪情報 / 動的ヤング率 / 原木の強度推定 |
研究実績の概要 |
本研究は,需要に応じた品質の原木の供給を実現するため,画像解析および機械学習により,(1) 「見た目」で経験的に把握されてきた材質を定量的に把握すること,(2) 原木強度と「見た目」の材質との関係を把握し,原木強度を推定すること,を目的としている。 目的(1)について,昨年開発したハフ変換及びTotal variationに基づく年輪情報の抽出がノイズの大きい未加工の画像において精度が低かったことから,本年は深層学習であるConvolutional Neural Network(CNN)を用いて画像のノイズの少ない部分を確定する方法を開発し,より精度が高い年輪情報を抽出することができた。また昨年開発した手法およびCNN手法を、本年新たに撮影した京丹波町・綾部市・南丹市美山町の山土場等のスギ丸太332本の末口の画像に適用を行なった。 目的(2)については,京都府立大学大枝演習林・大野演習林から伐採された4mの丸太79本について年輪の実測結果に加え、新たに未成熟材率,心材率を求め、動的ヤング率との関係を重回帰分析で把握した。直径別に解析を行なったところ未成熟材率が高くなるほど強度が弱くなる傾向が見られるとともに、直径20-22cmでは、昨年同様、年輪数・外側15年の年輪幅が狭くなると、動的ヤング率が高くなる傾向が見られた。決定木分析の結果、未成熟材率が低いと強度の等級が高く、未成熟材率が高く年輪数も少ない原木で等級が低くなる傾向が見られた。加えて、はい積み内での原木位置、原木グレーディングマシン測定方法(加速度センサータイプ、集音タイプの違い)による影響等について、現場を想定した調査を行い、強度測定において注意すべき点を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像解析による「見た目」の材質の特徴量の抽出では,昨年開発したハフ変換及びTotal variationに基づく年輪情報の抽出手法に関わる論文を発表した.また今年度は、昨年度課題となっていたノイズの大きい画像の精度向上に向け、新たにCNNを用いて特徴量と抽出手法を提案し、より高い精度を実現するとともに、その成果を国際学会の論文として採用された. 強度と相関のある「見た目」の材質の把握では,昨年は半径別の解析や未成熟材率や心材率を考慮するべきであるとの課題が残っていた。このため、本年は79本の丸太の木口の年輪(年輪数,平均年輪幅,中心 から15年輪までの平均年輪幅,成熟材部の平均年輪幅)の実測結果に、未成熟材率,心材率を加えて、丸太の強度との関係を把握した。その結果,未成熟材率が高くなるほど強度が弱くなる傾向が見られるとともに、直径20-22cmでは、昨年同様、年輪数・外側15年の年輪幅が狭くなると、動的ヤング率が高くなる傾向が見られた。また、強度等級と因子との関係を解析したところ、未成熟材率が高く年輪数が少ないと等級が低くなった。今後は画像から得られた年輪情報を用いて同様の解析を行い、画像解析の結果と強度との関係を把握していく必要がある。また、これらの因子を用いて画像から得られた年輪情報をもとにランダムフォレストなどの機械学習や深層学習を用いて強度推定モデルの構築に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
画像解析による「見た目」の材質の特徴量の抽出では、山土場で撮影した322本に適用したCNNの結果の精度検証を行なっていく。また、木材「見た目」特徴量と強度の関係について、年輪の実測データをもとに強度と関係のある「見た目」の材質が把握できつつあるため、これまでの解析結果を論文としてまとめていく予定である。また、実測で得られた結果が画像解析から得られる年輪情報からでも同様の傾向を示しているか、検討していく予定である。加えて、当初の予定通り、画像から得られた年輪情報をもとにランダムフォレストなどの機械学習や深層学習を用いて強度推定モデルの構築に取り組む。そして、画像から推定された強度を、原木の含水率を測定した正確な強度と比較することで、その精度の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度も新型コロナウィルスの感染拡大のため、宿泊を伴う遠方での調査ができず、予定していた国際学会や国内の森林学会がオンラインとなった。このため、調査・解析補助の人件費、調査に関する消耗品費分、学会参加のための旅費分を、次年度使用額として繰り越すことになった。令和3年度は当初予定をしていた調査消耗品の購入や学会発表用および調査用の国内旅費の執行に加えて,次年度使用額を使って想定している原木の調査を実行するとともに,強度調査および画像調査結果の取りまとめ用人件費として利用する予定である。
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