研究課題/領域番号 |
19K06326
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
井上 浩行 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (00232554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パワーアシスト / 農業ロボティクス / 移動ロボット / パワーアシストロボット / 上肢拳上作業 / 農業機械システム |
研究実績の概要 |
研究の目的は、ぶどう栽培に代表される立位姿勢で長時間腕を上げての作業負担を軽減するモビリティ型のパワーアシストシステムを開発することである。令和元年度は、剪定作業や収穫作業を対象とした腕を上げての作業を想定し、リンク機構を用いることで上腕、前腕、手の動きを一つのモータで補助するパワーアシスト装具を試作した。令和2年度は、さらなる小型化と高出力化を図るため、リンクの駆動方法をモータの回転を送りねじを用いて直線運動に変換する機構から、リニアアクチュエータに変更した。 次に、パワーアシスト装具を操作するインタフェースとして、赤外線LEDとフォトトランジスタを用いた赤外線センサの適用を試みた。赤外線光は、医療分野でも用いられる生体緩和性が高い信号源であり、皮膚組織での吸収率は低い。そのため、照射された赤外線光は筋肉に当たってその一部が反射するため、フォトトランジスタで筋肉からの反射量を測定することで、被験者の意図的な筋肉の動きを検出することを試みた。前腕の回内動作と回外動作からの意図表現の認識を試みたが、時間経過による再現性が乏しく、頻繁にキャリブレーションを行う必要があり、操作用インタフェースとして課題が残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業者の上腕、前腕、手の動きを一つのリニアアクチュエータで補助するため、昨年度試作したパワーアシスト装具を改良し、剪定作業や収穫作業を想定した作業パターンに対して評価実験を行った。その結果、肩関節、肘関節、手関節の屈曲伸展動作を補助する効果があることを確認した。また、パワーアシスト装具を構成しているリンク長が装具の動きに与える影響を明らかにするため、シミュレーションを実施し、設計指針の基礎を確立させた。 パワーアシスト装具を操作するインタフェースとして、赤外線LEDとフォトトランジスタを用いた赤外線センサの適用を試みたが、筋肉の動きから得られる信号の特徴量を見つけることができなかった。しかし、作業に悪影響を及ぼさないより意図的な腕の動きが許容できるなら、操作用インタフェースとしての活用が期待できる。 現状では、改良したパワーアシスト装具の補助効果が得られているので、ぶどう栽培作業において必要最低限の仕様は満足している。その一方では、普及率が高い携帯端末を活用したモビリティを含めた操作用インタフェースについても研究を行っているが、校内に実験環境を整備するのに時間がかかってしまい、現在も継続中である。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
モビリティに関しては、実際に人を載せてジョイスティック操作で基本的な走行が可能であることを確認しているが、走行環境が整備環境下であったため、実際の使用環境を想定した非整備環境下での走行を試みる。そのため、非整備環境下での走行ならびに作業補助を実現するために、モビリティの姿勢変化に対応する機構を付加することで、搭乗者の姿勢の安定化を図る。 パワーアシスト装具に関しては、作業補助時の違和感を軽減するため、さらなる改良を行う。また、補助する作業の汎用性を高めるためる方策として、リンク長を変更することで補助する動きを変更するなど、リンク機構のモジュール化についても検討を行う予定である。さらに、パワーアシスト装具を必要に応じて第二の上肢として活用し、頭上の枝や果実を保持した状態で作業者による剪定作業や収穫作業を可能にするなど、さらなる応用を試みる。 最後に、研究中のパワーアシスト装具の操作用インタフェースをモビリティまで拡張し、両者を統合したシステムを構築する。そして、構築したモビリティ型のパワーアシストシステムの有効性を検証するために評価実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行においてコロナ禍の影響により研究が一時停滞したため、必要な消耗品等に関して、次年度の研究で実施する方が有用であると判断し、次年度の物品費として使用する予定である。
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