研究課題/領域番号 |
19K06326
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
井上 浩行 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (00232554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パワーアシスト / 農業ロボティクス / 移動ロボット / パワーアシストロボット / 上肢拳上作業 / 農業機械システム |
研究実績の概要 |
研究の目的は、ぶどう栽培に代表される立位姿勢で長時間腕を上げての作業負担を軽減するモビリティ型のパワーアシストシステムを開発することである。令和3年度は、ぶどう農園内を走行するモビリティのプロトタイプに対し、傾斜地ほ場下においても作業者の座位姿勢を水平に保持する機構を提案した。機構としては、安全上の観点から移動速度を遅くすることで加減速時の加速度を抑制することで能動的にアクチュエータを用いて制御するのではなく、シンプルな構造とするために振り子の原理を用いた。受動的に座面を水平に保持する機構は、モビリティの筐体にボールキャスターを配置し、その上に曲面の部材をのせ、その上に椅子を取り付けた。設計仕様としては、最大傾斜角度を10°と仮定し、振り子の中心からの曲率半径を550mmとしてボールキャスターと接する曲面を設計した。ボールキャスターは、部材の曲面に接するように高さを調整し、部材曲面の円周上にはボールキャスターが曲面から逸脱しないようにストッパーを設けた。 そして、モビリティの操作用インタフェースとして、携帯端末上のボタンをタッチする方式のインタフェースを試作した。 次に、モビリティに搭乗した作業者の腕の動きを補助するパワーアシスト装具を改良した。パワーアシスト装具は、上腕、前腕、手の動きを一つのリニアアクチュエータで補助するため、リンク機構を用いて構成されているが、駆動時にリンクの剛性不足があったため、一部のリンク機構をペアに配置するように改良した。その結果、剛性不足が改善され、違和感が軽減した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ぶどう農園内を走行するモビリティのプロトタイプに、傾斜地ほ場下での使用を可能にするため、作業者の座位姿勢を水平に保持する機構を提案し、試作した。実際にモビリティを前後ならびに左右に傾けても姿勢を水平に保持可能であることを確認した。しかし、搭乗時や作業時には椅子が動かないように保持しなければならないため、作業者の意図を反映させる必要がある。 そして、ジョイスティックに代わる携帯端末による操作用インタフェースを試作し、ボタン操作により前進後退と左右の旋回が行えることを確認した。これにより、モビリティならびにパワーアシスト装具が携帯端末で操作可能となった。 パワーアシスト装具の剛性不足を解決するために、一部のリンク機構をペアに配置し、剪定作業や収穫作業を想定した作業パターンに対して評価実験を行った。その結果、肩関節、肘関節、手関節の屈曲伸展動作を補助効果があることを確認した。また、一部のリンク機構をペアに配置することで作業者の腕をのせる支持部の配置が容易になり、支持部の形状を変更することで様々な手の保持姿勢に対応可能となった。 計画では、パワーアシスト装具をモビリティに取り付け、両者の操作用インタフェースを統合する予定であったが、必要な電子部品が欠品となったためシステムを構築することができなかった。 以上のことから、遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
モビリティに関しては、実際に人を載せて傾斜地ほ場を走行することを想定して安全性の向上を図る。そのためには、試作したプロトタイプで走行実験を行い、生じた問題に対処することで、搭乗者の安全性ならびに走行性能を確保する。 パワーアシスト装具に関しては、補助する作業の汎用性を高めるため、リンク機構のモジュール化についても検討を行う予定である。また、頭上の枝や果実を保持した状態で作業者による剪定作業や収穫作業を可能にするなど、さらなる機能拡張を試みる。 最後に、モビリティならびにパワーアシスト装具それぞれ単独に構築されている操作用インタフェースを一つに統合したシステムを構築する。操作用インタフェースは、作業者にとって直感的にわかりやすいものでありながら、誤操作を生じさせないような配慮が必要である。そのため、評価実験により試作したモビリティ型のパワーアシストシステムの有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行において半導体不足により、必要な電子部品が欠品となったため、次年度の研究で実施する方が有用であると判断し、次年度の物品費として使用する予定である。
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