研究実績の概要 |
都市緑地で発生する(都市化の影響を受けた)植物廃材(枝葉)の分解特性が、温度環境の異なる地域でどのように変化するのかを、室内培養実験に基づき推定した。樹種により枝葉の分解特性が異なることが知られているので、試料として常緑性のものと落葉性のものを含むように、エノキ、ケヤキ、ネムノキ、ミズキ、スダジイ、マテバシイの 6樹種の枝葉を選んだ。これらの枝葉の分解特性への影響が大きいとされるC/N比は23から37であった。 これらの枝葉を粉砕し、有機物(枝葉)を分解させる微生物源である土壌と混入して、異なる温度段階で培養した。有機物の分解に伴い発生する二酸化炭素の発生速度の変化を経時的に測定し、反応速度論的解析によって、有機物に含まれる無機化されうる炭素量と全炭素に占める割合、炭素の無機化にかかる時間の指標、無機化に必要な(一定量の二酸化炭素を放出させるのに必要な)なエネルギー量を推定した。反応速度論的解析によって求めた炭素の無機化に必要なエネルギー量と様々な地域(札幌、仙台、船橋、大阪、福岡)の気象データから、地域間の枝葉の分解にかかる期間を推定した。 枝葉の乾燥重量1 kgに含まれる二酸化炭素にまで分解されうる炭素の量は、樹種により99から116 gであった。また、枝葉に含まれる全炭素に占める無機化されうる炭素の割合は20から25 %であった。枝葉から1モルの二酸化炭素を放出させるために必要なエネルギー(Ea)はおよそ13,000から18,000 calであった。枝葉に残存している無機化されうる炭素のうち、1日に無機化されるものの割合(炭素の無機化にかかる時間の指標)は0.033から0.083であった。 Eaと上記各地域の年平均気温から、各地における有機物分解に要する期間の相対値を求めた。有機物分解にかかる期間は最も分解の遅い札幌では最も早い福岡の1.6から2.3倍であった。
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